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SF読もうぜ(161) バリントン・J・ベイリー『禅〈ゼン・ガン〉銃』

 栄耀栄華をきわめた銀河帝国は、いま黄昏を迎えていた。隠しようもない退廃と風紀の紊乱が全てを覆い、激減した純人間を補うため、宇宙艦隊ですら大量の動物を乗組員にしているほどだ。そんなある日、エスコリア星域に恐るべき究極兵器が出現、帝国は危急存亡の時にある、との〈託宣〉があった。事態を重視したアーチャー提督は艦隊を率いて調査に赴くが、一行が発見したのは、人猿混合のキメラが手にした古色蒼然たる拳銃〈禅銃〉と、それに寄りそう伝説の超戦士〈小姓〉の謎めいた姿だった!英SF界の鬼才が奔放なアイデアで描く傑作ワイドスクリーン・バロック!

 面白かった!

 知能を引き上げた動物だとか、風紀紊乱状態にある帝国だとか、いろんな人のアイデアや、SF的シチュエーションを駆使して、作り上げた一大SFコラージュ。そこに「おかしな日本」までが加わって、いっそうエキゾチックな感じの作品になっております。

 「小姓」なんてのは、たしか日本ではお殿様のお傍に使える少年のことだと思うのですが、ここでは最強の戦士ということで、登場しています。どこから、そんな知識を作者は得たのでしょうか。気になります。向こうの人が考える東洋思想というのは、どうして、いつもこんなにおかしいのでしょうか。ちょっと、笑ってしまいました。

 凶暴なイタチ族の登場には筒井康隆の『虚構船団』を思い出しました。ブタやら、ゾウやらが二級市民として登場するこの世界はきっと人類補完機構シリーズに影響されたに違いないとか、そういう影響さがしをするのも楽しいです。

 シンプレックスの向こうの生物が、人間の体をバラバラに分解して、なおかつ生かしたままにしておくという行為をやってくれるのですが、そこで審美庵が自分の体の状態を見て、冷静におしゃべりしてくれます。こういうグロテスクなシチュエーションは大好きなので、楽しかった!自分の片方の目の玉を、もう片方の目の玉で観察するというゾクゾクする仕掛け!

 そして「後退理論」。重力による引力など存在しない!わはははは。こういう世界をひっくり返すような仕掛けも大好きなので、楽しすぎました。まさに「超虚構」な物語。
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おおっ

  • by ユキノ
  • 2007/04/23(Mon)23:34
  • Edit
これ、面白そうですね。
日本ポイところとか新鮮な感じ。
動物型異星人も気になるなぁ。

無題

  • by A・T
  • 2007/04/24(Tue)00:42
  • Edit
 雰囲気的には川原泉の『ブレーメンⅡ』を殺伐としたような感じでしょうか。
 短いながら、ベイリーの奇想が爆発した作品で、僕的にはけっこうお気に入りな作品です。帝国の女性の様子はちょっと、怖気が走りましたけど・・・・・・。いろんな意味でゾクゾクできます。

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