タイムスリップ、歴史改変、異星人との接触、テクノロジーの発達による人体及び精神の拡張等の代表的なテーマに沿って、戦後から今日に至るまでの名作SFを厳選した、日本SFの独自性と多様性を存分に楽しめるアンソロジー。
日本SFのアンソロジーです。
第一巻のテーマは、「タイムスリップ」。時間テーマの作品たちです。
やはり、このテーマは面白いですね。
個人的には、SF第一世代の作品はそれなりに読んでいるものの、それ以降はさっぱり読んでいないので、それらの名作に出会うということで、ワクワクしています。
◎大場惑「時間鉄道の夜」 10年に一度、運行されるという列車「時間鉄道」。その実在を確かめようと大学生である「ぼく」は仲間たちとさがすのだが・・・。
ノスタルジックな味わいの短編で、若かったあの頃、輝いていたあの頃への憧れがほとばしっていて、よい味わいになっています。大学生という設定も、過去と未来の狭間で揺れる存在として、すばらしいと思いました。SF味よりもファンタジー味のする甘酸っぱい物語ですね。
◎山田正紀「竜の侍」 剣技に優れた裕之介は将来を嘱望され江戸に上るが、病にかかり帰郷する。帰郷後、彼はおかしくなったともっぱらの噂だったが・・・。
これも厳密にはSFではないのでしょうが、優れた小説だと思います。江戸時代に恐竜の化石を求めてさまよう青年。剣で生きることもできなくなった彼は、藩の騒動に巻き込まれ、命を捨てることを選択する。そして、そんな彼に惹かれていた女性の哀しみ・・・。読後は静かな余韻に浸りました。
◎梶尾真治「時の果の色彩」 幼くして母を亡くした「私」は、就職した先の会社の社長に呼び出され社長室へ行く。そこで、「私」が体験する真実とは・・・。
いかにも梶尾真治らしいと思える短編です。時間の観念が独特な作品であり、現在から前後19年しか存在しない世界というところ、とても面白かった。そして、幼い頃の自分が目にしたものとの再会と疑念に合点がいくところ、すっきりしました。タイムトラベルものにはこれがないとね、と思いました。
◎谷甲州「フライデイ」 家族を捨て、帰還まで数十年かかる宇宙の探索に出た「私」。目覚めると「フライデイ」と名乗る生命体が話しかけてきて・・・。
フライデイの体長の大きさにびっくり。家族を捨てたという自責の念を持つ男の苦しみや悲しみをいかにして癒すのかと最初からずっと着目して読んでいました。距離が離れていくとコミュニケーションも取れなくなるというのが大問題だったのですが、情報生命体のフライデイは最後には時間を○○できるということで、すっげえなあと驚きました。
質の高い短編を読めて幸せでした。次の巻は「あり得たかもしれない歴史」ということで、これまた面白そうです。
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