一角獣から鳳凰、ゴジラまで――。人はどこまで空想の翼を翔かせえたか? 神話・伝説、宗教、芸術が生んだおびただしい幻獣は、何を物語るか? 絶対の美、恐怖の極、珍妙笑止な獣など、人間の華麗な精神絵巻をひもとく。(講談社現代新書:紹介文より)
マルコ・ポーロは大ぼら吹きだと思っていた。けれども、そうではないようだ。
マルコ・ポーロの語った幻獣たちや地誌。
樽のような体躯のヘビ⇒ワニ
一角獣⇒サイ
「ジパングは黄金の国」のような奇抜なイメージ⇒現地の人に流布していたもの
なるほど。マルコ・ポーロは本当に東方で見聞きしたものを書いたのだ。
そして、人々にとって未知の動物は「幻獣」になるのですね。
顔が両肩の間にあるヒトや尻尾のある巨人、というのも全て地誌や学術的な本に掲載されていたものだ。「幻獣紳士録」ではセイレーンや鵺など、頭の中で図像を作るとワクワクする幻獣たちが盛りだくさん。
最後の章は「ゴーレムからロボットへー二十世紀の幻獣」。SFファンには楽しいかもしれない。カレル・チャペックの創った「ロボット」のお話。実際にAIやロボットが我々の仕事を奪う可能性が指摘される今日、「ロビータ」がもともと「辛い労働」という意味であることを考えると深く考え込んでしまいます。それから解放されるだけならいいのだけれど、と嘆息。
内容だけでなくゴヤの絵画や『山海経』の図像なども楽しい本でした。
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COMMENT
虹作戦(レインボー・オペレーション)を追え
今年になってから、モラトリアムの読書感想が頻繁に更新されて、読書量がグッと増えているのが感じられます。羨ましいです。
僕は去年から、宮崎惇氏のSFをいろいろ読んでおり、最近では『21世紀失楽園』という傑作集まで買いました。
久々のSF紹介は、宮崎氏のSFスパイ・アクション、『虹作戦(レインボー・オペレーション)を追え』をお送りします。
主人公・神代恵介は、戦後間もない頃に記憶喪失のまま、今は亡き儀父母に拾われた青年で、現在は英語の教師をしています。ところが彼には奇妙な持病があり、時々奇怪な発作を起こしたりします。また、彼は外見上、殆ど年を取らない特異体質でもありました。
ある日。車に轢かれかけた子供を助けた彼は、不思議な力を発揮し、事故車を一瞬で凍結させてしまいます。それを知ったアメリカ・ソビエトのスパイたちは、彼の超能力を軍事目的に使うため、彼を付け狙い始めました。
何故、自分にこんな力が? 失った過去を調べていくうちに、恵介は自分の超能力と発作が、米軍が終戦間際に行ったある『極秘超常科学実験』に関係していることを突き止めます。不安定な力を武器に、恵介が突き止めた、自分の正体とは?
タイトルの『虹作戦』とは、今や都市伝説と化している、あの『実験』の事を指しています。迫るピンチを切り抜け、記憶を取り戻した恵介が、米ソ両国のスパイに反撃する様は、まさに必見! 手に汗握る国際SFアクションです。
残念ながら、宮崎氏はこの作品を書き上げた後に癌で急死し、この作品が遺作になってしまいました。元々は三部作で発表する筈だったそうなので、自信作だったのかもしれません。
『21世紀失楽園』は、これからゆっくり読んでゆこうと思います。こちらも読み終えたら、感想を述べたいと思います。
では、お休みなさい。
Re:虹作戦(レインボー・オペレーション)を追え
少し仕事のほうが落ち着いたので(この時期だけですが)いろいろと読む暇ができてうれしいです。
車を一瞬で凍結!すごいですね。「ソビエト」という響きが懐かしい。
宮崎惇さんは調べてみたら「聖マッスル」の人なんですね。とても楽しそうです。ぜひ感想をお願いします。