同じ課の新入社員武井に、ある日、召集令状が届いた。「たちの悪いいたずらだ」と気にも止めずにいたのだが、次々と男子社員に令状が届きだした。そして、彼らはそろって無断欠勤をはじめて、ある日「戦死公報」が届くようになる。2週間で失踪した若者はなんと7,500人。やがてその赤紙は十代の少年にも届くようになり……(『召集令状』)。表題作ほか計8編の傑作短編を収録。(角川書店:紹介文より)
収録作:○「戦争はなかった」◎「二〇一〇年八月十五日」☆「地には平和を」○「春の軍隊」○「コップ一杯の戦争」○「夢からの脱走」☆「お召し」◎「召集令状」
あの戦争を二度と繰り返すな!
この本が発する強いメッセージはそれに尽きる。
「二〇一〇年八月十五日」は戦争の記憶が風化した日本を描いた作品だが、身につまされるものがある。この本には小松左京自身が体験した戦争が描かれている。それは、ここまで悲惨なんだよなと震えがくるほどだ。身の回りで起きる空襲、偶然で分けられる生と死、不条理な暴力と世情の混乱。
戦争体験がすべての作品に陰を落としている。特に印象的なのは「地には平和を」。ポツダム宣言を受諾しなかったら日本はどうなっていたのか?自身をモデルに描き出した世界は陰惨で救いようがない。SFでしか描けない作品を世に問おうとした作者の姿勢そのものに胸を打たれます。
PR
COMMENT
21世紀失楽園
『召集令状』、僕も読んだことがありますが、最後まで怖い話ですよね。
小松作品には戦争テーマの作品が多々ありますが、どれも戦争経験者ならではの描写があります。思えば、第一次SF作家陣は、殆どが戦争経験者ですよね。
この人たちの願い、僕らの世代で実現させなければなりませよね。
前回紹介した、『21世紀失楽園』、遂に読破しました。いやあ、予想以上の面白さでしたよ。
三部構成になっていて、第一部と第二部は、自費出版された『21世紀失楽園』と『金毛九尾秘譚』を丸ごと収録、第三部は今迄殆ど再録されなかった未収録作品集になっています。さらに巻末資料として、光瀬龍氏と今日泊亜蘭氏の宮崎氏への追悼文も収録されています。
本当にこれは、読み甲斐のある一冊です。これを機に、宮崎惇氏が再評価されることを願ってやみません。
ではまた。
Re:21世紀失楽園
すてきだな、と思うところです。実際に戦争を体験された方々の言葉は、やはり重みが違いますね。『21世紀失楽園』、題名からして面白そうなニオイがしますね。最近、古いSFに再び食指が動くようになってきましたので、ぜひぜひ読んでみたいものです。ご紹介コメントありがとうございました。