21世紀、世界連邦食料機構の海務庁牧鯨局は、食用の鯨を海で放牧し、人類の食糧需要量の一割以上をまかなうほどになっていた。その海底牧場で、牧鯨者(ホエール・ボーイ)として鯨を管理する一等監視員ドン・バーリーは、新人として配属されてきたウォルター・フランクリンの訓練をまかされることになった。だが、フランクリンにはひとに言えない過去があった・・・・・・海に生きる男たちの波瀾に満ちた運命を描く巨匠クラークの感動的な海洋SF
なかなか面白かったです。
海中の様子がすてきです。一面ブルーの光景を思い浮かべると心が洗われるよう。しかし、クラークのおじさんはほんとうにイカが大好きですねえ。先日、友人の送別会でイカの活けづくりを食べたので、つばがわいてたまりませんでした。日本人にとってはイカは戦う相手というより、食う方が思い浮かぶような気がします。そういえば、NHKで巨大な大王イカの撮影に成功していましたねえ。あの映像を見たときも「おいしそう」と思ってしまったんですよね。
パニック症候群(かな?)で宇宙に出れなくなった青年が海によって救われていく。母なる海はやはり偉大です。しかし、どうにかして火星まで行けなかったんでしょうか?知恵を絞れば可能なような気がするのですが・・・・・・。まあ、悲恋の物語というのは好きなのでいいんですけどね。
最終章の問いは昔から存在するものですね。「生き物を食ってもいいのか?」殺生はできるだけ避けなければいけないけど、現在の人類は食わないと食糧の供給がおぼつかないわけです。けれど、この世界ではもう殺生しなくても、食糧事情は大丈夫なところまできている。未来では生き物を食うなんて倫理的にいけないことになっていくのでしょう。ただ、そうして食糧事情が悪くなったときに、人類は滅びてしまうかもしれないという危惧があるのですが、どうでしょう。
世界連邦の実現したユートピア未来なのですが、「失われた未来」という感じでレトロな美しさを感じます。50年代の作品なのですが、やっぱり、この頃のSFの世界観って好きだなあ。
アーサー・C・クラーク作品感想
『幼年期の終り』
『イルカの島』
『海底牧場』
『宇宙のランデブー』
『2001年宇宙の旅』
『2010年宇宙の旅』
『2061年宇宙の旅』
『3001年終局への旅』
『神の鉄槌』
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