いつから私はひとりでいる時、こんなに眠るようになったのだろう―。植物状態の妻を持つ恋人との恋愛を続ける中で、最愛の親友しおりが死んだ。眠りはどんどん深く長くなり、うめられない淋しさが身にせまる。ぬけられない息苦しさを「夜」に投影し、生きて愛することのせつなさを、その歓びを描いた表題作「白河夜船」の他「夜と夜の旅人」「ある体験」の“眠り三部作”。定本決定版。
収録作「白河夜船」「夜と夜の旅人」「ある体験」の三篇。
読んでいて少女漫画的だな、と思う。吉田秋生の細い線を思い浮かべるような繊細さ。文体も登場人物も。
昨日の村上春樹の「眠り」についての作品を続けて読んで、よけい眠るという行為がわからなくなった。吉本ばななの作品では、眠りの状態から目覚めるシーンがとても多いように感じる。
三篇共に人の死が介在する中で、周囲の人たちの心がどう救済されていくかという話だったように思う。最後に光がさしてくる。そんな作品が僕は好きだ。読後に元気をもらえる、がんばろうと思える、そういう作品だった。
眠りの中のようなぼんやりとした感覚で、小説の中では不思議が起こる。幽霊(?)の登場、兄と瓜二つの少年の登場、死人との邂逅・・・。小説とは夢のようなもので、没入している間は現実を忘れてそこに紛れもなく生を感じている。夢が僕らの願望や贖罪なんかを解決してくれるように、物語が僕らを癒してくれることもある。
この作品は現実に戻った僕に力を与えてくれた。
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