97本の短編が収録された「N・P」。著者・高瀬皿男はアメリカに暮らし、48歳で自殺を遂げている。彼には2人の遺児がいた。咲、乙彦の二卵性双生児の姉弟。風美は、高校生のときに恋人の庄司と、狂気の光を目にたたえる姉弟とパーティで出会っていた。そののち、「N・P」未収録の98話目を訳していた庄司もまた自ら命を絶った。その翻訳に関わった3人目の死者だった。5年後、風美は乙彦と再会し、狂信的な「N・P」マニアの存在を知り、いずれ風美の前に姿をあらわすだろうと告げられる。それは、苛烈な炎が風美をつつんだ瞬間でもあった。激しい愛が生んだ奇跡を描く、吉本ばななの傑作長編。(角川文庫:紹介文より)
ストーリーだけ確認していくと作者の好きなスティーヴン・キングみたいなモダンホラーみたい。でも、そこには優しい怖さ(うまくいえないけど)しかない。
読んでいる間、ぼんやりと頭の中に浮かぶのは光線の強い白さ、キラキラした感じ(若さや誠実さ、中性的な登場人物からそう感じるんだと思う)、運命の襲いかかる残酷さ、など、やっぱり少女漫画的なアイテムを思い浮かべてしまう。
キャラクターとしての萃(この名前のつけ方も少女漫画的)がやはり魅力的で、どういう行動をとるか予測がつかない人というのは、怖いし厄介な面もあるけれど、人を惹きつけるものだと思う。
自殺というものが、この作者の書いたものにはたくさん登場するけれど、この作品にもたくさん自殺者(未遂も含めて)が登場する。日本人にとってはこの問題は根深いものがあるのかなと思ってしまう。
ラストのシーンには心を動かされる。特に最後の一文。
生きていることを肯定してくれているようで心がほころぶ。
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