春が来るとジョン・アプダイクを思い出す。ジョン・アプダイクを読むと1968年の春を思い出す。ほんのちょっとしたことなのだけど、我々の人生や世界観はそのような「ほんのちょっとしたこと」で支えられているんじゃないか、という気がする…。都会的なセンチメンタリズムに充ちた13の短編と、カラフルなイラストが奏でる素敵なハーモニー。語り下ろし対談も収録した新編集版。
収録作「カティーサーク自身のための広告」「クリスマス」「ある種のコーヒーの飲み方について」「ジョン・アプダイクを読むための最良の場所」「FUN、FUN、FUN」「万年筆」「スパゲティー工場の秘密」「マイ・ネーム・イズ・アーチャー」「A DAY in THE LIFE」「双子町の双子まつり」「マイ・スニーカー・ストーリー」「鏡の中の夕焼け」「サヴォイでストンプ」
たくさんの断章とイラストのあふれる本。
初期の長編の1シーンのような作品もあるし、装丁についての話なんかもしている対談もうしろにくっついている。
今、村上春樹の作品を次々と読みつつ覚えている楽しみは、長編やら短編やらのつながりを見つけること。題名の「象工場」から既に「踊る小人」(「螢・納屋を焼く・その他の短編」収録)の舞台となっているやつが発見できる。関連していえば、「象の消滅」(「パン屋再襲撃」収録)における象への偏愛、そして、この本の中には「A DAY in THE LIFE」というビートルズの題名みたいな短編が象工場の一日の始まりを描いていてうれしい。
それから、「双子町の双子まつり」では双子への深い興味が描かれており、やはり「双子と沈んだ大陸」を読んだときに、ハッ、出てきた!と妙にうれしくなるのです。
スニーカーの起源の妄想であったり、喋る犬だったり、ハマる人はハマるはず。
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