あれこれとプロットを案じながら街をさまようが、そこで見かけたのは30年前に死んだ従姉にそっくりの女だった。謎めいた女の正体を追ううちに、作家は悪夢のような迷宮世界へと入り込んでいく…。奇想にあふれた怪奇小説の傑作が現代に蘇る。
小松左京の「題未定」みたいだなと思いながら最初は読んでいました。
しかし、ステキな題名です。「怪奇小説という題名の怪奇小説」。
なんだかメタフィクション的で、好きな作品です。
この当時の小説家は自分をイメージさせる一人称の主人公をよく登場させていて、そういう傾向の作品も好きなんです。自分のイメージを上手に使って、読者を騙してますね。
ミステリの翻訳家であり、自らもミステリを書く作者ならではの語り口で、「死んだはずの従姉に瓜二つの女は何者か?」という謎にぐいぐい引き込まれていきます。そういえば、都筑道夫さんの本を僕が読むのはなめくじ長屋シリーズ以来、十数年ぶりです。
「ホラー」というよりは、ほんとに「怪奇」という印象で、とても日本的です。途中で海外作品の翻訳という形の小説が挿入されるのと対比されて余計にそう思えるのでしょう。最後に登場する隠れ里の様子なんて、てとも興味深かった。そして、見世物小屋から出たかのような読後感です。
ページ数もそう多くなく、一気にぐいぐいと読ませる力のある作品でした。
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