1988年公開の『となりのトトロ』は歴代ジブリ作品のなかでも最も子供たちに人気のある名作だ。「森のヌシ神」としてのトトロ像から、昭和30年代の日本の食卓まで、あさのあつこ、半藤一利、中川李枝子、川上弘美ら豪華執筆陣が作品の背景を解き明かす。背景美術・男鹿和雄の世界、サツキとメイの家ほか、カラーページも満載。
「となりのトトロ」については複雑な感情があります。
小さなころに見逃して、初見が中学生だというのが、一番の理由です。
一番おいしいころに取り逃してしまった・・・。でも楽しい作品です。
その制作の船出が厳しいものだったというのが、まず最初の驚きです。
制作に難色を示され、ビデオでの制作を打診され、「火垂るの墓」との併営を提案すれば、「オバケに墓とはなんだ」と怒られ、配給会社にも断られ、公開日程も厳しいものに・・・。
現在、こんなに愛されてる作品が公開当初は赤字だったとは驚きです。
「トトロ」という作品は子供が愛好するだけの作品でなく、その後ろに控えているさまざまな民俗学というか日本的ななにかがわたしたちを引き寄せる魅力があると思うのでです。
川上弘美さんの文章はそれだけで、独立したエッセイとして楽しめるのですが、「死」を意識し始めた長男が、「パンダコパンダ」から「となりのトトロ」へと熱心に見る対象が移っていったとの体験を書いておられます。「トトロ」には「闇」がある、と。
鎌田東二さんは、「カミ」としてのトトロについて書いておられます。日本古来の神とは「畏怖」と「魅力」の両方を感じさせるものだと。たしかに、トトロのあの焦点の合っていない目というのはただ「かわいい」だけじゃない不気味なものを感じさせますよね。
小澤俊夫さんは昔話の専門家。僕は一時期podcastで、小澤俊夫さんの昔話を子守唄代わりに聞いていたことがあって、名前を見てうれしかった。「トトロ」が昔話の語法にのっとっている箇所があると指摘されています。たしかに「通路」があったり、「一次元性」っていうのは納得できます。
毎度ながら大塚英志さんの指摘には感嘆いたします。
たしかに「火垂るの墓」との連関性はスゴイ!一読の価値あり。
宮崎監督自身が「作っていて本当に幸せだった作品です」とおっしゃっているのが印象的でした。もう一度、作品の端々まで見返したくなるすばらしい本です。
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