「名コンビ」と謳われた2人。雑誌掲載時の作品を中心に「真鍋博の插絵」という視点で集めた唯一の作品集。ショートショートの結末や核心に決して触れることなく、物語の魅力と世界観を最大限に伝えてくれる魔法の插絵の数々。「おーいでてこーい」「ボッコちゃん」「マイ国家」他。(ちくま文庫:作品紹介より)
小学校の学級文庫に置いてあった一冊の文庫本。新潮文庫の「ボッコちゃん」が星新一との初めての出会いであり、それはつまりSFとの最初の邂逅でした。その装丁と挿画は真鍋博。だから、SFというイメージが浮かぶときに、頭をかすめるのは真鍋さんの絵です。
ページをめくると広がる白と黒の世界。細い線の描く描線と広い余白。時としてベタ塗りの闇の深さが際立ち、それは星新一のブラックなユーモアを思い起こさせます。感情表現の定型的な機械的人のドライな感じが、これまた星新一の文章にぴったり。
おそらく雑誌掲載時のイラストが多くあり、文庫本ではなかなか味わえないレイアウトが楽しめます。そこに文章があって生きる、映えるイラスト。文章とイラストレーションがみごとに作品世界を創出しています。
かつて、星新一の世界に虜になった人へ特におすすめします。
あのころ抱いた結末へ向かうワクワクがきっとよみがえるはずです。
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