6年前、東洋プロレスの梶原年雄に敗れ、自らの肉体を鍛え続ける丹波文七と竹宮流・泉宗一郎の野試合は凄絶をきわめた。文七の名は立会人・姫川勉の口から北辰空手総師・松尾象山の耳にも届く。子犬のようにつきまとう少年・久保涼二をつれ、文七は東京へ。目指すは梶原!格闘小説の金字塔第一弾。
血がたぎる!
男は誰もが強さに憧れる・・・・・・。
プロレスのようなエンターテイメントショーでもなく、キックやボクシングのようなスポーツではない。ただ、どちらが強いのか、それを競うだけ。闘う男たちの身を切るような緊張感は、場合によっては命すら失いかけない状況の中から生まれ出、短く骨太な文章によって僕の脳髄に叩き込まれる。
ただただ面白い。
真に最強の格闘技とはなにか?空手をやっていた一人の青年がプロレスの道場で敗れ、ただただ強さをのみ追い求めていくようになっていく。純粋な夢追い人の物語。そして、それにつられるように動きだす空手会の巨人、プロレスラーたち。
添え物のようなアクションではなく、アクションそのものを描く。肉体の挙動が格闘シーンでは細かく描かれ、痛み、衝撃、興奮が余すところなく表出する。だからこそ、血沸き肉踊る。勝負の行方よりも、格闘者と同じく今この瞬間の生を感じる。エネルギーに満ちた物語だ。
梶原との勝負は結局、つかずじまいで終わる。けれど、この先、彼とは決着をつけないわけにはいかなくなるだろう。次巻が楽しみでしかたがない!
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