北辰館の人間がたてつづけに野試合で倒された。四人とも竹宮流を学んでいる。その件で泉宗一郎が文七に会いたがっている。宗一郎の娘・冴子を紹介しつつ、そう告げたのは松尾象山だった。きみに恨みはない、といいながら宗一郎は静かに門弟・藤巻十三について語り始めた。驚異のベストセラー第2弾。
最初から燃えるのである。
次々と襲われていく竹宮流を学んだ空手家たち。丹波文七と思われる謎の男。戦闘、戦闘、また戦闘・・・・・・。息つく暇もなくストーリーがどんどんと進んで行く。完全に物語の中に惹き込まれている。
闘うことの意味に疑問を抱いた文七。しかし、その前に現われる巨星松尾象山。格闘家にとっての一番の敵、年齢を凌駕する化物のような存在。その存在感はどのキャラクターをも凌駕するもので、やはりラスボスはこいつかとも思う。それとも蛇のような男、姫川か?とにかく、その松尾象山の存在によって、再び文七は闘いの楽しさに目覚め、次なる闘いに赴いていくのである。
技は流派のつくりあげた文化である。それをどう継承していくのか。竹宮流の真髄を叩き込まれた男、藤巻十三。人殺しという罪を背負い、自らも両親を殺害された業を背負う。そして、もう一人竹宮流を直々に伝承された男、丹波文七。この二人のぶつかり合いに興奮しないわけがない。そして、今回も文七の闘いに決着はつかず持ち越されることになる。
さらには、東洋プロレスの長田がクローズアップされ、北辰館との抗争が激化しそうな様相を終章で見せている。真に最強の男は誰なのか?キャラクターの増加と共に物語はさらにうねり、高みへ突き抜けていく予感を抱かせる。
三巻をすぐに読むぜい。
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COMMENT
SF紹介 ―マイナス・ゼロ―
僕は格闘技の小説は、一度も読んだことがありません。戦闘場面を、どう活字で表現するかが難しいところでしょうね。
因みに漫画では、梶原一騎原作の『空手バカ一代』などが好きです。
昨日、好きな国産SFを久々に読破しました。広瀬正の『マイナス・ゼロ』という時間SFです。
事の発端は、昭和二十年―戦時中のことです。当時学生だった浜田俊夫は、隣人である科学者、井沢先生が焼夷弾の直撃を受けて倒れているのを発見しました。先生は十八年後の今日に、研究室を訪ねて欲しいと言い残し、事切れます。その日以来、先生の愛娘・啓子は行方不明になってしまいました。
十八年後の昭和三十八年。再び先生の研究室を訪ねた俊夫が見たもの―それは錆びたロッカーか金庫のような物体と、当時の年齢のままの井沢啓子の姿でした。彼は物体の中にあった先生の日記を読み、驚愕の事実を知ります。なんと井沢先生は未来人であり、あの物体はタイム・マシンだったのです! 先生は孤児院から引き取り可愛がっていた啓子を救うため、彼女をマシンで戦後の平和な時代に送ったのでした。
後日、再びマシンに入った俊夫は、マシンを操作して、過去へと旅立ちます。しかしそれは、壮大な時間の神秘に満ちた、数奇な運命へと彼を誘うのでした……。
海外では時間SFの金字塔は、ハインラインの『夏への扉』が有名ですが、本書は間違いなく、国産時間SFの金字塔だと思います。
登場人物は、みな個性派揃いで、特に戦前の東京で俊夫が世話になるトビ職一家は、とても親切で人情味あふれる人たちでした。また、著者が徹底的に調べ上げた戦前の東京の町並みは、驚くほどリアルで、古き良き時代を垣間見ることが出ます。そして、タイム・パラドックスも、本家『夏への扉』を上回る、見事なものでした。
実に、読み応えのある名作でした。
ではまた。
Re:SF紹介 ―マイナス・ゼロ―
短篇や評論にも時間ものの素晴らしいものがあるようなので、読むのが楽しみです。