古い屋敷で留守番をする「僕」がある夜見た、いや見なかったものは何だったのか?椎の木の根元から突然現われた緑色の獣のかわいそうな運命。「氷男」と結婚した女は、なぜ南極などへ行こうとしたのか…。次々に繰り広げられる不思議な世界。楽しく、そして底無しの怖さを秘めた七つの短編を収録。
短編集。収録作「レキシントンの幽霊」「緑色の獣」「沈黙」「氷男」「トニー滝谷」「七番目の男」「めくらやなぎと、眠る女」
いい・・・。
表題作を代表として怪談話めいた話もあり、多くに「怖さ」というものが表現されていた。
愛した人を失う怖さ(「トニー滝谷」)、人に信じられなくなる怖さ(「沈黙」)、わけのわからない存在への怖さ(「緑色の獣」)・・・。
総じて孤独な主人公たち。日常に違和感なく溶け込む非日常、超自然。でも、それを違和感なく読ませてしまう、実在としてすんなり受け取れる、世界がそこにある。小説家の力というものを読んでいて感じた。
そして、恐怖を克服するところには「癒し」がある。
この本は癒される作品群だった。
どれも好きな作品だったけれど、「レキシントンの幽霊」「めくらやなぎと、眠る女」がお気に入り。「トニー滝谷」もよかった。
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