「わたし」の息子マシューには、彼にしか聞こえない不思議な声が聞こえるらしい。初めは空想力の強い子供によくあることと思っていたが、次第に事態はエスカレートし始め、「わたし」とその妻メアリーは不安になってくる。その声の持ち主「チョッキー」は、幼い息子に二進法での計算方法を教えたり、人間の自動車の非効率性について嘲笑したりしているらしい・・・・・・。はたして「チョッキー」はマシューの想像の中だけの存在なのか?それとも実在の高度知性体なのか?
父と息子の物語。感動しました。
落ち着いた語り口、さりげないユーモア、大きな視点から語られる物語。ああ、どこからどこをとっても僕の大好きなジョン・ウインダムの作品です。
物語はサスペンス調に進んでいきます。
姿の見えない相手と会話する息子マシュー。当惑し、マシューが正常であることを強く望む妻。マシューの質問に困惑する教師たち。マシューの話を聴き、チョッキーは存在すると認める医師。マシューのことを追う新聞記者たち。そして、マシューの誘拐事件。
「チョッキー」は実在するのかしないのか!?
さて、「チョッキー」の存在についてですが、子どもの頃は傍にいて、超常的な力を持っていて、思春期を迎えると去っていくという一連の流れに、僕は藤子・F・不二雄の一連のマンガ作品(『ドラえもん』『オバケのQ太郎』など)を読後に思い浮かべました。「チョッキー」は人間の知性を手助けするためにマシューを選び、マシューに深く介在しすぎたがために、マシューの元を離れなければならなくなってしまいます。この兄貴的な視線はやはり僕にドラえもんを思い起こさせ、マシューの命を助けたがために彼の元を去っていく「チョッキー」の話には涙させられるものがありました。ありがとうドラえもん・・・・・・、いや、もといチョッキー。
・・・・・・ちょっとふざけてしまいましたが、冒頭にも書いたように、この物語は父と息子の物語でもあります。男親と息子とは家族の中でも同性の仲間であるという連帯感があり、ちょっとした共犯関係にあります。ラストシーンのメダルの名前を変えるところなんて、涙がこらえきれません。
さすが、ジョン・ウインダム。期待に違わずすばらしい物語でした。
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COMMENT
冷凍人間アイスマン
『チョッキー』は、僕も読んだことがあります。これがウィンダムの遺作だそうですね。
僕も、最後のメダルの場面には感動しました。父親は、我が子のことを良く理解していると思います。
昨日は、加納一朗氏の『冷凍人間アイスマン』を読破しました。とても面白かったです。
主人公・青井是馬と荒馬は、人間離れした顔と食欲、そして人一倍の好奇心を持った、いたずら兄弟です。ある真夏の日、二人は道端に落ちていた書類の入った鞄を、持ち主の家に届けに来ます。するとそこの主人は、何故かストーブをガンガン炊き、懐炉と電気毛布に身を包んで、何かに怯えていました。
翌日。忘れ物を取りに行った是馬は、主人が死んでいるのを発見します。しかもその死因は…凍死でした!
事件に興味を持った兄弟は、マッドサイエンティストの北川南天博士とその娘ひろみとともに、その謎を解こうとします。しかしその行く手には、人工冬眠手術のミスで超低温体質と化した、冷凍人間が待ち受けていました。しかもその背後には、もっと恐ろしい秘密が…。
果たして四人は、事件を無事解決できるのでしょうか?
加納氏の作品はSFマガジンにも掲載されていたので、A・T様もご存知と思います。その加納氏が手がけた、ユーモアSFシリーズが本作です。何しろこのシリーズ、60年代から90年代まで、全28作も発表されたというのだから、凄いです!
図書館か古書店で見かけたら、是非一読を! 抱腹絶倒、間違いなしです。
ではまた!
Re:冷凍人間アイスマン
久しぶりに更新しましたら、SFに対する愛が止まらなくなりました。
『アイスマン』面白そうな作品ですね。ユーモアSFは大好きなので、見かけたらぜひ購入してみます。
そういえば新しい『ハヤカワSFシリーズ』購入してみました。まだ積ん読の状態になっておりますが。
おかげさまで新たなSFとの出会いが増えてます。ありがとうございます。では、また。