イギリスの片田舎で過ごした少年期、ロンドンでの公務員生活、そしてイギリス空軍の技術士官としてレーダー開発に従事した6年間・・・・・・やがてSF界の巨匠となるアーサー・C・クラークのかたわらには、常にパルプ雑誌〈アスタウンディング〉と驚異に満ちた短篇の数々があった。SFと宇宙科学への関心で結ばれた様々な友人たちと交流した黄金の日々を、ユーモア溢れる筆致で生き生きと描いたファン待望の自伝的エッセイ。
アスタウンディング誌の歴史をアーサー・C・クラークが個人誌を交えながら語ります。
個人的には『トンデモ本の世界』に通ずるような、とんでもない本に突っ込みを入れて楽しむという方法が方々で使われていて、笑わせてくれました。
部立てが編集長の名前になっており、それぞれ個性の強い編集長たちの紹介と彼らがいかなる雑誌作りをしたのかが書かれています。もちろん、一番興味があるのはジョン・W・キャンベルです。SFの理論の核をつくった人物として、名編集長として、「影が行く」や「月は地獄だ!」の作者として、その名前はあまりに有名すぎます。SFの黄金時代がいかに築かれていくのかを読むのは楽しいことでした。
古い『SFマガジン』を読んでいたので(今後、落ち着いたらまた挑戦するつもりでいますが)、親しい名前がたくさんでてくるのが嬉しいです。ハインライン、アシモフ、特にヴォークトの作品が取り上げられているのは、なんだか僕としては不思議な感じがします。
ところで、特に一章を設けて、スタンリー・G・ワインボウムという作家について、クラークは語っています。僕も「火星のオデッセイ」を読んで面白いなと思った記憶があるのですが、クラークは以下のようなことを述べていることからもわかるように、この作品に対する思い入れがあるのでしょう。
スタニスワフ・レムが、ワインボウムを一行でも読んだかどうかは知らないが、彼の傑作『ソラリスの陽のもとに』と『大失敗』は、「火星のオデッセイ」を彷彿とさせる多数の作品のうちに数えられる。
アメリカではワインボウムの傑作集が出ているようですが、日本ではきっと訳出など不可能だろうなあ。この章ではもう一つ、ピエール・ブールの「カナシマ博士の月の庭園」という作品について言及されているのですが、こちらは翻訳が出ているようなので、いつか読んでみたいなあ。
読みたいSFをさらに増やしてくれた一冊でした。
アーサー・C・クラーク作品感想
『幼年期の終り』
『イルカの島』
『海底牧場』
『宇宙のランデブー』
『2001年宇宙の旅』
『2010年宇宙の旅』
『2061年宇宙の旅』
『3001年終局への旅』
『神の鉄槌』
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