舞台は24世紀、人類の進化が人の心を自在に透視する超感覚者たちを生みだし、犯罪を計画することさえ不可能とされた時代。全太陽系を支配する一大産業王国の樹立を狙うベン・ライクは、宿命のライバルを倒すため、あえて殺人という非常手段に訴える、計画は首尾よく成功したかに思われた。だがニューヨーク警察本部の第一級超感覚者、刑事部長リンカーン・パウエルは、この世紀の大犯罪を前に陣頭指揮を開始、ここに超感覚者ライクの、虚虚実実の攻防戦が展開する!現代SFの鬼才の処女長編にして第一回ヒューゴー賞の栄誉に輝く歴史的傑作!
面
白いぞー!
と、思わず叫びたくなるほどの面白さ。そして、まるでページから炎が飛び散ってきそうなすさまじい物語のエネルギーと熱さ。心が震えました!
超能力が発達した世界で計画殺人の件数は皆無になっている。なぜなら、殺意がテレパシーで超感覚者には伝わってしまうからだ。しかし、ライクはそれを逆手にとって、完全犯罪を目論む。意識が覗かれないように音楽を利用し、旧時代の武器をちょっと細工したものを使い、さらには第一級の超感覚者を抱き込み・・・・・・。だが、倒叙ミステリの一つの定石で、実行段階になってトラブルが発生し、ライクは破滅に向かってさらに犯行を重ねていってしまうのだ。このあたりのライクの堕ちていく様子が素晴らしく面白い。
昭和初期の探偵小説のSF版のようなこの小説では、刑事部長パウエルと犯罪者ライクの対決が、明智小五郎と怪人二十面相のように、互いに相手を認め合いながら憎み合い、そして心の隅では大きな共感を抱いているという複雑な愛情が見え隠れして、とてもいい。やはり、男と男の闘いはこうでなくてはならないぜ。
そして、単純にそれだけではなく、前衛的な手法を駆使した超能力者どうしの会話。筒井康隆の「七瀬シリーズ」や「底流」でも同じようなタイポグラフィの手法が登場するのですが、これがすばらしく面白い。もう、ページを眺めているだけで楽しい。
また、《集団精神エネルギー集中発現》という技により、現実が瓦解していくライクの姿にはディックの小説のような恐ろしさがあり、スピーディーに進んで行くストーリーにクラクラしながら、ライクが「分解」されるまでの間、ほとんど止まることなくページを繰り続けたのでした。
前に読んで肌が合わないように感じたベスターでしたが、また、「虎よ!虎よ!」も読んでみようかなあと思います。今度はものすごく楽しめるかも。そこまで思わせてくれるすばらしい作品にまた出会えてよかった。
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