異星人との戦争で過去の遺産がことごとく失われた地球。異星人が遺した遺跡を調べていた考古学者たちのもとに、驚くべき資料が届けられた。300年前に撮られた一枚の写真に、現在よりはるかに古びた遺跡の姿が写っているのだ。遺跡は年とともに新しくなっているというのか?彼らは異星人の技術を用いてタイムマシンを開発し、過去へと旅立つ。アイデア派の鬼才が放つ究極の時間SF。
童心に帰れます。
まるでナチスのような純血主義のタイタン人たちが織り成す社会からストーリーが始まります。主人公は考古学者のヘシュケという男。ある遺跡の調査をしていたところ、不思議なことにその遺跡の過去の写真を見てみると、はるか昔のほうが今よりもさびれており、現在のほうが新しくなっている様子で・・・?
という魅力的な謎で始まるのですが、そこに一極集中せず、話の風呂敷がどんどん大きくなっていく様子がすばらしい。初めは異種間戦争の話で、対エイリアン戦争であったのが、タイムマシンの登場で今度は時空間を超えた戦争に突入?さらには、弾圧される人類亜種(というものは実は存在しないのだが)の地下勢力の抵抗運動まで織り交ぜてくるあたり、さすがベイリーという感じ。さらには、いくつもの方向で流れている時間流が衝突を起こし、人類の存在自体が危機に陥ってくるとくれば、もうワクワクするしかないじゃないですか。
とくに面白かったのは、中国人(?)たちが構成している宇宙に浮かんだ砂時計状の都市レトルト・シティという社会。上層は芸術などにふける支配階級、下層は技術者階級の社会。人々は平和に暮しているのだが、そこに革命児が・・・・・・というお話なのですが、いちいちディティールが面白すぎる。特に卓球がすばらしい。
境界線の上を通過した瞬間、ボールは宙空で消えた。
魁牧(キム)も消えた。しかし、一瞬後、ボールは蘇夢(スームン)めがけて飛来し、魁牧もふたたび、台の正面に出現した。
さすが卓球王国!消える魔球だけではなく、時間の位相をずらすことによって、人まで消える。しかも、五感を振り絞ってその球に対応するなんて、気功の世界だ。事実、スームンたちが駆使する武術「ホカ」は神経の上を一撫でするだけで、タイタン軍の兵士たちを気絶させることができるのだ!このオリエンタルな感じがすばらしすぎる!
広げに広げた風呂敷を閉じるための超越者の登場など、最後の最後まで突き抜けた感じがすばらしい、壮大なおもちゃ箱のような作品でした。ただ、もう楽しかった。
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COMMENT
良いお年を
『時間衝突』の感想、読ませてもらいました。遺跡が年々新しくなるという発想が凄いです。それに、中国人の都市というのも、SFでは珍しいような気がしました。
今年は銀背も去ることながら、鶴書房の『SFベストセラーズ』など、ジュブナイルSFの収穫もありました。また、広瀬氏の『マイナス・ゼロ』が収録されている『宇宙塵』も入手でき、SFファンとしては感無量の良年でした。
来年も神保町巡りをし、多くの作品と出会いたいと思います。また楽しく、SFを語り合えると良いですね。
では、来年も変わらぬ縁でありますように。
良いお年をお迎え下さい。
あけましておめでとうございます。
今年もお互いいいSFに出会えるとよいですね。本年もよろしくお願いします。