フレドリック・ブラウンが編集したユーモアSFアンソロジー。
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ロバート・アーサー『タイム・マシン』
ジュレマイアー・ジュピターにピクニックに誘われた「ぼく」は、彼の奇妙な連れに仰天する。ジュピターはある特技を持つ三匹のチンパンジーに、ある役割を担わせるのだが・・・・・・。
時間もの。猿たちの巻き起こす騒動が楽しい。が、そこまで面白いとは思わない。
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マレー・ラインスター『ジョーという名のロジック』
過去に放送されたTVの全情報や、ヴィジフォーン、情報などをいつでも見れて、キーによって検索できるロジックという機会が各家庭に普及した未来。ある日、突然変異のロジック「ジョー」が検閲回路に左右されずに彼の能力を存分に発揮しだした。贋金作りの方法や、亭主を追っ払う方法など、万能の解決を与えるロジックに世界は大混乱!
今のインターネットが徐々にこれに近づいているような気がします。その中、いろいろな情報が整理されてネット上に公開される日がくるのではないかと思います。個人情報漏洩など、現在の状況を言い当てているところもあります。なんでも、万事解決できる電子頭脳が登場すると確かに厄介ですね。
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エリック・フランク・ラッセル『ミュータント』
ミュータントを捜索している役所にミュータント存在の情報をくれる電話がかかってくる。嫌々ながら、主人公は電話の主のもとに向かうのだが、今度のミュータントは人間でなくしゃべる馬だった!
筒井康隆に人間が手術で馬になり、競馬に出る話がありますが、この話から着想を得たのでは?と思いました。途中の駅での腹話術合戦が笑えます。そして、ラストの主人公の報復にニヤリとしてしまいます。
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マック・レナルズ『火星人来襲』
火星人たちは十分に準備をして、地球侵攻の計画を始めたはずだった・・・・・・。ところが、地球人たちには兵器がきかない。これはどうしたことだ?
月面でラジオ放送を研究していた火星人の地球専門家が、地球にはサム・スペードや、スーパーマンなどがいて、手ごわいという部分だけ面白かった。微妙。
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ネルスン・ボンド『SF作家失格』
SF作家を目指すグーリアは今日も原稿を買ってもらえず、落胆していた。そんな彼を車に乗せて送ってくれようとしている人がいる。ところが、そいつは未来人で、乗せられたものはタイムマシンだった。
うーん。つまらないを通り越してなんだか不愉快になるなあ。『火星人ゴーホーム』の火星人に似ているような気もするけど、あれはあまり不愉快にはならなかったものな。こういう悪意が僕は嫌いだ。
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フレドリック・ブラウン『恐竜パラドックス』
大学の講義を受けていたショーティ・マッケーブは一匹の青バエがある地点で突然消えてしまうのを目撃する。そこに手をのばしてみると、なんと、自分の手まで消えてしまったのだ・・・・・・。
パラドックスの存在をこういう風に解釈するのは面白い。精神病院の人間が消えてしまう話は確かディックの短編あたりにもあったような・・・・・・。こういう哲学的な命題は好きですね。主観的タイムマシンといったところでしょうか?
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クライブ・ジャクスン『ヴァーニスの剣士』
火星の地で、たくましいヒーローと、王女が、屈強な騎士の一団に追われている!彼らの運命やいかに?
同人誌が初出のお話だそうですが、いかにも同人誌的な作品です。ラストにはちょっと虚をつかれて吹き出してしまいました。
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ラリー・ショー『宇宙サーカス』
醜い風貌と体躯をもったシムウォージィは誰も彼もを憎んでいた。彼は商売人になったが、ちょこまかとした罪で警察に追われ、不時着した惑星で強烈なほれ薬を持った老人に出会った。
うーん。題名からもうちょっと面白いものを期待したのだが、期待はずれ。
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H・B・ファイフ『ロボット編集者』
編集長を務めるエドは参っていた。金切り声を直さないロボット、すべてのストーリーを紋切り型に要約してしまうロボットなどのろくでもない編集員たち。それに加えて女の問題まで・・・・・・。
うーん、これも題名に期待しすぎました。作家とロボット編集者とのバトルなら、面白く感じたかもしれません。
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ジョージ・O・スミス『地球=火星自動販売機』
地球で新しく開発された自動販売機が、火星人の自動販売機と繋がってしまって・・・・・・。
言語の解読であったり、生命の多様性であったりする議論が面白く、また、文化の違いがナンセンスな面白さをかもしだしています。やっぱり、『月の蛾』とか、こういう異星の文化的違いのギャグって面白い。そして、自動販売機が惑星間の渡航手段になってしまうというのも面白くていいです。
総評:やっぱり、SFの真髄はユーモアSFだ!と筒井信奉者としては思うわけです。ただ、笑いの感覚というのは人それぞれなので、やっぱり各話でかなり評価が別れます。
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