ロバート・シェクリイの短編集。(記号は個人的な評価)
◎
『怪物』
尻尾を持ち、二十五日目で妻を殺す習慣を持つ生物どもの星に、異星人がやってきた・・・・・・。
ばんばん仲間や妻を殺してしまう様子に笑ってしまいます。一つ目の国では二つ目が化け物であるというお話です。
△
『幸福の代償』
子供の将来の賃金まで抵当に入れて、便利な新製品を買い求める(そして、それが常識的な生活なのだ)男の話。
なんだか、しみじみとしてしまうラストが印象的。人はなんのために働いているのだろうという根本的な問いかけがある作品。
×
『祭壇』
駅に向かう道でいつも出会う男はいつも奇妙な場所のことをスレーターに言う。しかし、そんな場所はここいらにはないのだ。
これは自分的にはイマイチでした。
◎
『体形』
グロム人は太陽系第三惑星を侵略しようとやってきた。彼等は出生によって決まった体形と職業であることを義務付けられているのだが・・・・・・。
こういう不定形な生物が大好きです。『ターミネーター2』のT-1000とか。カースト制のようなグロム人の制度や習慣が面白い。そして、ラストもすばらしい。
○
『時間に挟まれた男』
ジャックは階段を下りると、原始時代に出てしまう。逆にある程度上に行けば未来の世界に出てしまう。時間に挟まれたジャックはこの状態を抜け出すことができるのか?
ドタバタ的な展開が笑いを誘う。特に原始人たちとのスーツケースをめぐる追いかけっこが楽しい。
○
『人間の手がまだ触れない』
食糧はあとわずか。宇宙船をある星に寄せ、食糧をさがすこと八周目。彼等は生物が残したと思われる巨大な建築物を発見する。そこは、昔、この星に住んでいたらしい生物の倉庫のようだった。ここに食糧はあるのだろうか?
未知のものを食べる時にどれだけ勇気がいるのか。初めてナマコを食べた人間はすごいとよく言われるが、この作品を読めば納得。面白い作品です。
△
『王様のご用命』
結婚を二人が営む電気店の儲け具合に賭けている恋人どうしだが、その電気店の商品を夜な夜な盗んでいくものがいる。そいつは古代の巨人だった。
ファンタジイ。まあまあ、楽しいです。
◎
『あたたかい』
恋する彼女に会いにいこうとしたその日、アンダースの心に「助けてくれ」という悲鳴が聞こえた。この声は何者が発しているのか?
SFを超えて純文学のような気もしますが。虚無主義的になっていくアンダースの心に共鳴するのは僕だけだろうか。哲学的ともいっていい作品で、この作品集の中では一番好きかもしれない。ただ、最後の種あかしみたいなラストでなければ、もっといい作品だったと思う。
○
『悪魔たち』
どうした手違いか、普通の保険外交員であるアーサーは悪魔として誰かに呼び出され、「一万ポンドのドラスト」を要求される。
やっぱり、ラストが楽しい作品。無理難題をどう切り抜けるか、というとんち話。
◎
『専門家』
宇宙船は各人類が専門化してできていた。宇宙船の壁となる人々、目になる人種、頭脳となる人種、原子炉となる人種・・・・・・。ところが、推進役となる人間が死亡してしまい、彼等は近くの星から、推進役の人材を捜さなくてはいけなくなった。
面白い。人間の戦争する原因みたいなところが説かれる部分が好きです。そして、最後に一体化した満足感を得る部分も、現在の人間の知覚不能なところを描いてあって面白い。
○
『七番目の犠牲』
合法的に殺人が許された未来、殺人者と被殺人者は計略を用いて戦うことになるのだ。主人公フリレインの今度の獲物は女だった・・・・・・。
途中までいい話。最後びっくり。
◎
『儀式』
数千年振りに異星から「神」が舞い降りた。現地人たちは、儀式の踊りを数日間ぶっ通しでやるよう長老に言われるのだが、異端の考えを信奉するものが現れて・・・・・・。
すごく面白い。途中、苦しんでいる人間どもと大真面目に儀式をやりとおそうとする異星人に思わず笑ってしまう。やっぱり、『怪物』といい、『人間の手がまだ触れない』といい、未知の生物の習慣って、理解を超絶していてナンセンスな面白さです。
◎
『静かなる水のほとりに』
マーク・ロジャースは炭鉱者を引退して、小惑星に居を構え、チャールズと名づけたロボットと暮らし始める。
小惑星の岩盤に家を建てるという発想が、もう、わくわくします。そして、わずらわしい世を離れて隠遁生活というのも憧れます。そして、最後のしみじみとした終り方。素晴らしいです。
総評:やっぱりSFの面白さというのはアイデアストーリー的な部分が大きいと思います。それが顕著にでるのが短篇ですよね。一つの異常な状態という謎が提示され、最後にその種が明かされる、あるいは問題が解決されるというこの基本的な道筋がばっちり決まった素晴らしい短篇群です。
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