初の日本での本格的SF雑誌の創刊。『SFマガジン』はSFの啓蒙という使命を持ち合わせていました。当時、SFを出版すると潰れるというジンクスがあったらしいです(福島正実『未踏の時代』より)。どっかで読んだのですが、『SFマガジン』を『SMマガジン』と間違えて、その手のコーナーに置いてあったというのはホントなんでしょうかね(うろ覚えの知識ですが)?
とにもかくにも創刊の辞にはものすごい意気ごみを感じます。
『SFマガジン』は『ファンタジイ・アンド・サイエンス・フィクション』の日本語版として出発しました。創刊号にはアイザック・アシモフ、『MFSF』誌編集長のロバート・P・ミルズが祝辞を寄せています。
R・シェクリイ『危険の報酬』
記念すべき創刊号の巻頭はロバート・シェクリイ。平凡な男レイダーは命がけのテレビショウに出て、高額の報酬を得ていた。危険度は徐々に上がっていき、そしてスリル・ショー最大の『危険の報酬』に出場することになる。そこで、彼はマフィアに命を狙われることになり、彼らの手を逃れ一週間生き延びるミッションを与えられる。彼は「大衆」に命を助けられるが、同時に「大衆」のせいで命を危険にさらす。
人間の本質をえぐった素晴らしい短篇。筒井康隆の疑似イベントものなんかは、この辺の話からインスピレーションを得たのでしょうか。確か似たような話がありましたな。
A・バートラム・チャンドラー『限界角度』
ソ連がロケットに赤い粉末を換価荷重として積んで行き、月の一部に赤い染みがついた。そのおかげでアメリカ宇宙局としてはソ連よりも早く友人宇宙船を打ち上げなくてはならず、主人公は相棒と準備不足にも関わらず二人で月へ向かった。ところが月面上に積もった塵のために脱出できない!脱出のための苦闘が始まった。
なんか技術的な話が多くて、僕のような科学の成績が悪い者にとっては辛い。が、ソ連とアメリカの宇宙競争の様子が見て取れて、また、ソ連に対する悪いイメージが見て取れて面白い。昔のSFはソ連(共産主義)に対して敵意むき出しだからなあ。
レスター・デル・リイ『愛しのヘレン』
主人公「私」は親友であるロボット修理業のデイヴと共に感情を持つロボット「ヘレン」を創りあげた。ところが、ヘレンは「恋愛」まで学習してしまい、デイヴに恋をするようになってしまったのだ。デイヴは彼女を拒否し、田舎で農園をやることに決めて出て行ったのだが・・・・・・。
ロボットに恋をする、ロボットに愛される。感情を有する機械はすでに機械ではなく、機能面を除けば人間と同等であり、恋愛してもかまわない(のだろうか?)。意外にお気楽な話だったので、楽しく読めた。
アイザック・アシモフ『五十億年の塵』
アシモフ博士の科学エッセイ。しかも、書き下ろし。地球に降る塵がいくら積もるかとか、地球では吹き飛んでしまう塵も月では噴火口に積もれば十五メートルくらい積もるとか、思わず「へー」ボタンを押したくなる。
アイザック・アシモフ『やがて明ける夜』
科学探偵小説。久しぶりに地球に帰ってきた天文学者たちはヴィリアースという大学院時代の級友の手紙で集まった。その手紙には質量移転装置を発明したと書いてあったのだ。ヴィリアースと天文学者が再会を果たしたその夜、ヴィリアースは心臓発作で死に、質量移転装置の論文を写したマイクロフィルムが奪われていた。犯人はいったい誰なのか?
なんだか結末には納得できかねますが、アースという探偵役のキャラクターは好きですね。
日下実男『地球物語』
科学エッセイ。宇宙の誕生を論じています。
糸川英夫『宇宙ロケット随筆』
科学エッセイ。宇宙旅行の可能性を論じています。
R・マティスン『次元断層』
ドナルド・マーシャルは仕事の息抜きにレストランへ行くが、そこでまったく見知らぬ男に親しげに話しかけられる。その男の話すマーシャルは正に自分のことだが、微妙に自分の履歴が間違っている。彼はどうやら次元の違う世界に迷い込んでしまったらしい。
まだ名称がきっちりと定まってなかったのか、ここでは「多角宇宙(オールタネイテイク・ユニバース)」という言葉が使われています。ところが別の場面では多元宇宙と書かれている。それとも、原文の表記が微妙に違うのでしょうか。オチがいいですね。
岡俊雄『SF映画展望 空想科学映画まかり通る』
SF映画について取り上げている。今回のテーマは宇宙の映画とUFO。『地球防衛軍』見てみたいなあ。
フィリップ・K・ディック『探検隊帰る』
火星から帰還した五人の宇宙飛行士は歓喜に包まれていた。しかし、町へ入っても彼等は歓迎されるどころか、避けられ周囲には人っ子一人いなくなる始末。警察がやってきて、彼等は殲滅されることに・・・・・・。
暗いっす。辛いっす。でも、ディックのテーマの典型的な形ですよね。「何が本物で、何が偽者なのか」。これは偽者側の視点から描いた物語なんで、読むのがけっこう辛い。殲滅する側だったら爽快感を感じたかもしれないのに。
アーサー・C・クラーク『太陽系最後の日』
宇宙に対する責任を負っているアルヴェロンとその種族はある太陽系に発見された悲劇の人類の救出に向かっていた。地球にたどりついた彼らだが、地球上には生物は発見されなかった。人類は全て滅びてしまったのか?
やはり、とても前向きなラストが印象に残る作品。途中のエレベータでのスリルも面白いです。クラークの出世作といわれています。読むのは二度目ですが、このクラークの楽観的な部分が僕は好きですね。
レイ・ブラッドベリ『七年に一度の夏』
とめどなく降る雨に閉ざされた金星に、七年に一度の太陽が甦って・・・・・・。
こういう作品にぶつかると困ってしまう。なにが面白いのかは理屈では理解できるのだが、この暗さと陰湿さが僕の心を沈ませてしまう。嫌いな作家ではないんだけどなあ。
ロバート・ブロック『地獄行列車』
マーチンは悪魔と取引をし、幸せの絶頂にあるとき、永遠に時間を止めることのできる装置を手に入れる。やがて、マーチンは富や家族を手に入れるのだが、時間を止める機会を逃してしまって・・・・・・。
「幸福とはそれをさがすことである」という寺山修司の『幸福論』の一説を思い出してしまう。第十七回世界SFコンテストで最優秀短篇賞を受賞したというのも肯けます。特にひねりのきいたラストが素晴らしい!
荒川秀俊『二十一世紀の夢 気象の人工制御』
科学エッセイ。ソ連の氷を溶かす計画とか、人口降雨の可能性とか、読んでて面白いです。台風をそらす方法は九州に住んでいる人間としては早く開発してほしいです。いや、マジで。明日台風来るし。
編集ノート
福島氏の苦労や意気込みが伝わってくる。
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