さて、第一回目の記事です。なんにしようか迷ったのですが、私が人生において一番影響を受けた作品、松本大洋の『ピンポン』についてです。このブログは基本的に「こんな面白いものがあるんですよー」と紹介することを体裁にした私の自己満足のためのものなので本当に人に来ていただけるのか心配です。だから、これは私的な日記をただ公開しているだけ。ただ、それだけなんだと誰も来ないときのための予防線をここに明示しておきたい(泣)。
幼馴染の星野豊(ペコ)と月本誠(スマイル)は卓球選手。片瀬高校に進学した二人だったが、スマイルは顧問に才能を見いだされ、めきめきと才能を開花させていく。同じ頃、海王学園では去年の全国大会の覇者風間(ドラゴン)もスマイルの才能を認め、ペコとスマイルの幼馴染佐久間(アクマ)は面白くない。辻本には中国人留学生孔文革がやってきて、大会に波乱を起こしそうだ。
高校生たちの熱い卓球バトルを描きつつ、彼らの苦悩や恍惚を表現した青春漫画。
僕がこれを初めて読んだのは高校二年生のときでした。
面白すぎて泣けました。どれくらい面白いのか実例をあげます。当時、僕はバドミントン部に属していましたが、朝練でランニングがありました。ノルマは四キロです。しかし、僕はこの作品に感銘を受け、スマイル(月本誠)が小泉に渡された練習メニューに「朝練 ランニング十キロ」と書かれているのを見つけ、
本気で毎朝十キロ走りました。それぐらい面白いです。
映画化されたと聞けば公開初日に自転車で映画館に駆けつけ、松本大洋デザインの海王Tシャツを買って悦に浸っていたりしました。今、思えば
ただの馬鹿です。しかし、ただの馬鹿だとも言い切れないかもしれません。毎朝、十キロ走ったおかげか私はなんと県予選を二位で通過し、インターハイに出場できました(←自慢)。この漫画にはこんな効能もあるのです。
しかし、僕がこの漫画で最も考えたのは「才能」の問題でした。未だにアクマの台詞は僕の心に突き刺さります。「飛べねえ鳥もいる」。才能というものは残酷です。しかし、そういった青春という時期に感じるいろいろな悲劇をペコというヒーローが自らを含めて救っていく。ペコ・スマイル・アクマ・ドラゴン・チャイナ、それぞれが問題を抱えていながら、「ピンポン」という球技を通して浄化されていくさまは登場人物だけではなく、読者をも幸せに導いてくれる。週刊漫画誌に連載された作品としては細部に渡って完成された珍しい作品だと思います。手に取ったことのない方は、ぜひ一度読んでみることをおすすめします。
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