2001年2月13日、時空連続体に発生した異常―――タイムクエイクのために、あらゆる人間や事物が、1991年2月17日へ逆もどりしてしまった。ひとびとはみな、タイムクエイクの起きた瞬間にたどりつくまで、あらためて過去の行為をくりかえさざるをえなくなる。しかも、この異常事態が終わったとき、世界じゅうは大混乱に・・・・・・!SF作家のキルゴア・トラウトやヴォネガット自身も登場する、シニカルでユーモラスな感動の長篇。
面白かった。
シニカルでユーモラスでハートウォーミング。そして、悲しみ。小説というよりは、変形的なヴォネガットの自伝のように感じます。
元々書いていた小説の上澄みだけを取り上げた作品だそうで、それにヴォネガット自身の語りを付け足していくという奇妙な構成。解説にもあるように、それがさらにヴォネガットらしさを発揮させているし、語り手として彼自身が登場することによって、メッセージがさらに強く心に響いてきます。
書き直した『タイムクエイク2』のほうもいいですが、もともとの形の『タイムクエイク1』のほうも読んでみたかったですね。変形的な小説であるので、どう受容していいのか、正直よくわからなかったところがありますので。一長一短という感じがしました。
今回はキルゴア・トラウトが大活躍!トラウトの短篇が登場するたびにニヤリ。トラウト版の聖書には大笑いです。もちろん、トラウトが登場しないシーンでも吹き出すことしきり。ローレル&ハーディを尊敬するヴォネガットは、自身も一流のコメディアンですね。一番笑ったのは『チリンガ・リーン』とやけくそで怒鳴った男の話。
これで、長篇で読んでいないのは『母なる夜』だけになりました。トラウトの登場するものは全部読んでしまったので、最後のページを読み終わったときには、少し寂しくなりました。ああ、また『ローズウォーターさん~』から読み直してみよう。いつか時間ができたら・・・・・・。
ああ、そういえば、フィリップ・ホセ・ファーマーがキルゴア・トラウト名義で書いた『貝殻の上のヴィーナス』というのがあるんだった。読まねば!
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