烈風が吹きすさぶ荒れ果てた砂漠を、スネークはさまよっていた。彼女の職業は〈治療師〉。蛇の毒素から抗体をつくって、病人を癒す者。だが今のスネークには、その資格はなかった。治療のために必要な三匹の蛇のうち、スネーク自身がつくりあげた「夢の蛇」が殺されてしまったのだ。かくしてスネークは、新たなる夢の蛇を手に入れるべく、核戦争の爪跡も消えやらぬ荒野に旅立つが、その行手には何者かの邪悪な影がちらつき、旅を妨害するのだった!ル・グィン、ティプトリーと並び称される閨秀作家が流麗なタッチで描き、ヒューゴー、ネビュラ賞受賞に輝いた傑作SF!
面白かったデス。
三匹の蛇を使って治療薬を作り上げる〈治療師〉。核戦争後の集落社会に、社会奉仕的意味合いをもった医者が人びとを癒すため、そして自分の尊厳を守るために戦う物語。ブラック・ジャックのような、尊厳死の問題を扱っていたりして、なにやら物語に緊張感が漂っています。
物語としてはまだ科学を受け継いでいる都市があったり、その都市が異星人と付き合っていたり、実は「夢の蛇」自体が異星の生物であることがわかったりと、ミステリ的展開も含んでいて、なかなか読ませるものがあります。ただし、解決はされませんが。
途中で出没する「狂人」なるものも正体がわかると、なんだか拍子抜けしてしまったのは僕だけでしょうか。「ムムっ、なにやら巨悪の臭い・・・・・・」と期待していたからか・・・・・・。
よくも悪くも、フェミニズムのニオイが滲み出ています。全篇読み通して感じたのは、男性と女性の感覚の違いですかね。女主人公スネークは躊躇なく「美しい」中腹の男の子をリードして寝たのに対して、スネークの思い人アレヴィンはスネークのことを考え、誘ってきた女性になびかず純潔(?)を守ります(もっともスネークはアレヴィンと再会する事が不確定とか、アレヴィンのほうは厳格な文化に生まれ育ったとか設定上のフォローはありますが)。これは男性作家の描く都合のいい世界と正反対なような気がします。あとは母としての自覚とか、性的虐待の被害者である娘とか、僕としては読んでいても、男性として「なんか・・・・・・ゴメンナサイ」というような気分になってしまい、なんだか物語に入り込むのが難しかったですね。なんだか柴田よしきの『RIKO』を読んだときのような気分になりました。あれほどまでじゃないですが、「ついていけねーなー」というような気分。
だから女性にはオススメの作品なのかな?はっきりいって僕が感情移入していたアレヴィンが可愛そうな気がしました。あんだけ頑張ったのに最後の見せ場がこれだけかよ・・・・・・と思ってしまいました。健気なアレヴィンに乾杯!
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