こいつあ掘出し物だ!ボーナスでふくらんだポケットを想像しながら、徴募係軍曹はケッケッとほくそ笑んだ。かくて辺鄙な片田舎に住むビルの平凡かつのどかな生活は終りをつげ、かわってキャンプ・レオン・トロツキーでの地獄のような訓練の毎日が始まった。おりから爬虫人チンガーとの戦いは熾烈をきわめ、果てはビルの属する訓練部隊まで狩りだされる始末。だが戦況は不利だった。戦友が次々と斃れて行くなかで、面白半分にビルが触った原子砲が、なんと敵宇宙戦艦に大当り!かくして彼は一躍宇宙の英雄となったのだが・・・・・・。傑作戦争コミック宇宙大活劇!
まあまあ面白かった。
なんだか気持ち悪い表紙だなあ、誰が書いてんだ?と名前を見ると、巨匠藤子不二雄先生でした。たぶん絵柄から見て、F先生の方です。失礼なこと考えてすみません。たぶん、現代的なマンガキャラクターというのは、劇画とマンガ双方を取り入れた記号表現になっているのが普通になってしまっていると思うのですが、F先生のカバー絵はマンガの記号表現をそのままリアルにしようとしてしまったので、ちょっと怖く思えてしまうのでしょう。それとも、この怖さは内容を鑑みた狙いなのでしょうか。
田舎育ちのビルは、むりやり軍隊に取られ、嫌々ながら戦争に駆り出されます。その嫌々さ加減、僕にはすごーくわかるぞ。浅倉久志氏の訳者あとがきによれば、『宇宙の戦士』のパロディであるとのこと。たしかにあの作品はものすごく茶化したくなる作品ではあるなあ。誰も市民の責任とか言い出さず、利己的なところがステキ。機動歩兵が沼に沈んでいく様子にも笑いました。
ビルが第二部で生活する金属で覆われた星ヘリオールは『銀河帝国興亡史』のトランターのパロディのようです。地下での生活で、浮浪者の身分から、清掃局に入り、さらに地下組織のスパイになるくだりのところが楽しかったです。たしかに、ゴミ問題は深刻で、惑星全体が都市化していれば、ゴミをどこに捨てるのかは重要な課題ですねえ。物質転送で宇宙空間に捨ててたら、天文学者に見つかって怒られたというギャグがSFらしくて好きでした。
ハリイ・ハリスンを読むのは、『テクニカラー・タイムマシン』以来ですが、なかなか楽しめました。ラストの跋で、突如としてテーマが深刻性を増しますが、プロローグの場所に戻ってきて終り、まとめ方がうまいなあと思いました。このテーマ性は『人間がいっぱい』にも繋がっているようで、こちらもいつか入手して読んでみたいと思います。
PR
COMMENT