「SF読もうぜ」としたのは筒井氏がSFジャンルの作家として活躍されていた頃の本だからです。
一番鋭いと思ったのは星新一の文章ですね。「狂気へのあこがれとまじめな努力」。この指摘には非常に共感しました。「霊長類南へ」の小松左京の筒井康隆論もさすがに鋭いです。
文庫解説というのは、本を売るための紹介といえるものですから、作家論に達していないものもあるので、人によってはつまらない、というか、筒井ファンには言わずもがなのことを述べているものもあるので、少々読んでいて退屈な感じがありました。まあ、これは新規の読者を開発しようとしていらっしゃるものなので、筆者の想定対象と自分が違うということが大きいでしょう。
オーソドックスを踏まえているからのパロディ、実験ということは、御本人も近年強く言っていることですね。本人が常識的だからこそ、狂気への憧れがあるという指摘もうなずけるところです。
あと、面白かったのは「男たちのかいた絵」の中島梓氏の解説。ヤクザ映画を観る視点について語り、「ルーティン、あるいはパターン・ドラマ、というものは、常に、ある性的倒錯の形象化にほかならないのだ。」と断じるのに僕は思わず心の中で拍手を送りました。そして、おそらく中島氏がヤクザ映画に感じた「いかがわしさ」というのは、おそらく「やおい」的な女性の視点にほかならないのでしょう。さすが「美少年学入門」を書いた人である。高校生のとき、栗本薫にはまった僕は、この本を読んでぶっ飛んでしまった記憶があります。
少しもの足りない感じがしないでもないですが、なかなか面白かったです。自分なりの筒井康隆観と比較して、楽しむことができました。
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