というわけで、SF読もうぜ100回目です。
銀河系の彼方から、謎に包まれた星間実業家パーマー・エルドリッチが新種のドラッグを携えて太陽系に帰還してきた。迫りくる地球滅亡にそなえて、不毛の惑星へ強制移住させられた人々にとって、ドラッグは必需品である。彼らはこぞってエルドリッチのドラッグに飛びつくが、幻影に酔いしれる彼らを待っていたのは、死よりも恐るべき陥宑だった・・・・・・蝕まれゆく現実と白昼夢が交錯する戦慄の魔界を描破した鬼才の最高傑作!
うーん、面白い。繰り返す幻覚世界に、頭がおかしくなりそう。
大原まり子の『処女少女マンガ家』シリーズで、「『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』ごっこ」というのがでてきて、山田のおばあちゃんがエルドリッチの格好をしながら町を徘徊するという場面が出てくるのですが、元ネタがわかると、さらに面白いです。
エルドリッチの正体とその伝染の模様が面白かったですね。単純なアシッド小説かと思ったのですが、けっこう、SF的なシチュエーションがコラージュされていて、たしかに傑作だと思います。だけれども、ハヤカワ文庫の作品紹介(↑)はちょっと煽りすぎじゃないか、コレ?読む前に、ハードルがかなり上がっちゃったじゃないか。
登場人物が、幾人も平行に描かれていて、ちょっと感情移入しにくかったなあ、というのが正直な感想なんですが。やっぱり、進化した人類とやらには、ちょっと、共感できませんでしたけど。結局、主人公はレオだったのか、バーニイだったのか・・・・・・。そのへんの曖昧さや、構成のまずさ(と、個人的には思いました)が、読みにくかったかなあ。
エピグラフの言葉を数千語で解説した、とディックは語っているそうですが、読み終わった後に、見てみると、確かにそれはわかります。絶望的な状況における、人間の前向きな苦闘みたいなものが見えて、心にぐっときます。また、このお話は宗教の物語でも、ありますね。火星の生物に「汚れている」といわれるシーンが、よかったです。よくわからない部分もありましたが、その分も合わせて激しく幻惑されるお話でした。
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