本日は昭和37年1月20日の図書新聞より、「〝ファンジン(SF同人誌)〟日本版の水準 アイディアが先き走る」という記事です。科学創作クラブ編集発行『宇宙塵』、ヌル編集室発行『ヌル』が批判されております。
最初にキングズリイ・エイミスの『地獄の新地図』でジャズとSFが同様に下からの突き上げによって成長したことを言い、ファンジンの説明があります。アメリカではファンジン出身の人がプロになっているという解説があった後、以下のように続きます。
日本でも、こうした動きは当然ある。機関紙『宇宙塵』に拠る科学創作クラブがその代表的な存在で、すでに五年以上つづいているし、ほかにも、たとえば大阪には『ヌル』という同人誌がなかなか熱心な活動をしている。が、不幸にして日本の場合は、あまり積極的な役割を演じていないというのが実情だ。
理由としてはいろいろあろうが、第一にはやはり、小説としての技術の未熟さ、SF的なアイデアが、そのまま小説になると考える素朴なアマチュアリズムが、同人作家の成長をさまたげているのだろう。
そして、「アイデアの貧困な既成作家のSFよりも、自分たちのほうがより純粋なSFなのだ、という自惚れがあるように思える」、プロになろうという欲求とそれが絡み合い、「星新一がSFショート・ショートで売りだせば、猫も杓子もショート・ショートを書こうとする」といったような批判が展開されています。最後に、「こうした面の反省がないかぎり、まだしばらく、日本のSFは、否応なしに既成作家に依存せざるを得ないだろう。」と締めくくられます。
無署名の記事ですので、誰が書いたか判じることはできません。
ただ、まだまだ日本のSF作家が育っていない時分の時代背景がわかるのではないでしょうか。自分としては、筒井康隆が中心となった『NULL』がこんなに大きな扱いをされているとは意外でしたので、新たな発見でした。
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COMMENT
SF紹介 ―第四次元―
SF研究、拝見しました。誰が書いたかは分からないそうですが、その人の眼から見て、今現在のSFは、どういう風に見えるのでしょうかね?
昨日、また一冊読破しました。イタリアのsf作家リーノ・アルダーニの短編集『第四次元』です。
リーノ・アルダーニはイタリア唯一のSF雑誌『futoro(=未来)』(今でもあるのかな?)の編集者であり、自身も優れた作品を発表しています。
全太陽系征服を謀る火星植民地団と地球人との諜報戦を描いた『秘密諜報員の死』、主人公が犬に変わり、代わりに主人公になった犬が妻を誘惑する『犬類』、上司の命令に逆らえない火星人スパイの苦悩をユーモラスに描いた『命令は絶対なり』、行方不明になった恋人の驚くべき正体を描く怪奇作『赤い証明』、ドリーム・フィルムによる画像文明のドラマ『おやすみ、ソフィア』など、全13篇
の傑作短編集です。
個人的に気に入ったのは、『命令は絶対なり』と、『赤い証明』です。
『命令は絶対なり』は、ユーモア度ベスト1で、『赤い証明』は、皮肉な結末が涙を誘う好編です。
全体的に、多くの『皮肉』が漂う、それでいて妙に惹かれる一冊でした。
ではまた。
Re:SF紹介 ―第四次元―
イタリアSFはおそらくディーノ・ブッツァーニという人の短篇を一つ読んだくらいでしょうか。ストーリーを拝見させていただくだけで、わくわくできました。どちらかというと文學肌のもののようで、僕の好みのお話群かもしれません。最近は星新一を読み返していますが、実に面白いです。物語の原点ですね。