長老ゾブの館を取り巻く森のはずれに見知らぬ青年が現れた。自分についての記憶をすっかり失くしている。館の住人たちは猫のような不思議な目から黄色を意味するフォークと名づけ五年のあいだ庇護するが、記憶はもどらぬままだった。ゾブは彼の正体に頭を悩ませた。かつて《全世界連盟》を倒した人類の敵シングの手先か、それともシングに記憶を消された館への使者なのか?やがてゾブは意を決し、真の自分を探す旅へフォークを送り出すが・・・・・・。『ロカノンの世界』『辺境の惑星』につづきSF界の女王が流麗な筆致で描く未来史シリーズ第三弾。
面白い。
『もののけ姫』みたいです。共同体の中から追放された青年が、呪いをとくために西に旅立つ。まあ、二重の記憶を持つことは、二つの文化を知っていると言い換えてもいいでしょう。その二面性を獲得することによって、達しえた地球の真実の姿。それを解き明かしていくまでの過程が、大変面白い。
単純に村への帰還とならないところが、やはり、物語を宇宙へ拡大させたSFらしい展開かなあ。神話や民話だと、素直に帰ってきますがね。確かに、二重人格だとどちらが故郷か迷うでしょうねえ。
途中に登場するサトリの爺さんとか、いかにも神話をSFに置き換えた作品ということを感じさせます。ただ、なんだか物語の途中にお話をぶったぎられた感じが最後にはありました。どうせ、神話の形態であれば、めでたし、めでたしのエピローグがほしかった。まあ、このことはシリーズの中で、おいおい明らかにされていくんでしょうけど。
さあ、次はついに『闇の左手』だ。
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