○
『グレイのフラノを身につけて』
ロマンチックな男ハンリーは、ロマンスを求めていた。そこへロマンスを商っているというセールスマンがやってきて・・・・・・。
最後のオチがいいなあ。『恋愛株式会社』と似たようなところがあります。
◎
『ひる』
エネルギーを栄養とする未知の生命体が現れた。土を吸収し、風を吸収し、雨を吸収し、「ひる」はどんどん大きくなる。ついに軍隊までが出動する騒ぎに発展するが・・・・・・。
出会うのは三度目です。けれど、面白いことに変わりなし。
○
『監視鳥』
人間の「殺人」という愚行をやめさせるために開発された監視鳥。ところが、鳥たちは、「殺人」を拡大解釈し始めて・・・・・・。
ロボットの恐怖・・・・・・ですね。ユーモラスな作品ですが、「自分たちの不始末は自分たちで解決する」という根本的なことを忘れちゃいけないってことですかねえ。
○
『風起こる』
強風吹き荒れるキャレラ第一星。そこに『前進探検兵団』の一員として赴任しているクレイトンは水道管の修理のため、風吹き荒れる中を巨大トラックで前進していくのだが・・・・・・。
異星の環境と、生物の生態は地球人の想像できるものではないのだぞ、という話。強風の中、生活するキャレラ人の生活形態も面白かった。けれど、船の操舵法を知らない自分には途中の風との戦いがあまり細かく想像できなかった。それが残念。
○
『一夜明けて』
目ざめると、そこは異星と思しき密林だった!昨日はニューヨークで泥酔していたはずだのに・・・・・・ピアセンは自らの記憶を手繰り寄せようとする。
種明かしもなんてことないのですが、ニューヨークの政治形態や、ユートピア的な未来での停滞、など、SFらしくて面白かった。
☆
『原住民の問題』
集団生活への適応能力がない青年ダントンは宇宙へその身を置く場所を求めた。ダントンは新惑星に移り住むことに決め、そこをニュー・タヒチと名づける。ある日、空から宇宙船が降りてきた。そして、なぜかダントンはそこの原住民だと決め付けられることになる・・・・・・。
超面白いです。植民の不合理さみたいなのが、よく表れています。「原住民」と決め付けられたダントンの中途からの、方針転換、そして、そのことによる円滑な両者の和解、ロマンスの成就など、鮮やかな展開に魅せられました。とくに最後のエピローグ的な二頁はニコニコしながら読みました。最高。
○
『給餌の時間』
古書を発掘するのが趣味のトレッジスは古書店で『グリフォンの飼育と管理』という本を発見する。
ショートショート。ラストにはあまりびっくりしないけど、古書店の描写など、主人公の心理にうなずくところもあって、まあまあ面白い。
○
『パラダイス第二』
新惑星発見かと思いきや、至るところ骸骨ばかりの惑星に到着してしまったハワードとフレミング。彼らはある建物に入るのだが・・・・・・。
最後の一ページに思わず吹き出してしまった。
○
『倍額保険』
バースオールドは生命保険を研究し尽くして、巧妙な詐欺の方法を考え付いた。支払われる保険金の額がある条件において倍になる「倍額保険」を彼は騙し取ろうというのだ。そこで彼はタイムマシンで過去に遡って、自分そっくりの人間を探し回るのだが・・・・・・。
各々の時間でへまをやらかし、そして、最後にそのツケが自分に返ってくる様子が面白かった。それまでの、条件の発生の作り方がシェクリイは巧いんですよねえ。ただ、最後はちょっと強引な感が否めないかな。
○
『乗船拒否』
二十三世紀、人種的偏見はなくなった。ところが、ある優秀な宇宙船乗組員が新任乗組員との航海を「人種的偏見」を理由に拒否しているという。船長は頭を悩ませるが・・・・・・。
人種的偏見を高い視点から捉えた作品。懐が深いですね、シェクリイは。こういう世界的な問題を扱えるから、SFが好きです。
◎
『暁の侵入者』
ディロンはある惑星にたどり着き、そこで出会った知的生物の心に侵入する。この星を侵略するためだ。人類は人口爆発の末、他惑星に住む知的生物を精神的に乗っ取り(乗り移り)、その惑星を支配してしまうのだ。ところが、今度の敵はものすごく手ごわい奴だった。精神の内部で凄まじい闘いが繰り広げられる!
いやあ、ものすごく面白いです!侵略ものを逆手にとって、今度は人類が侵略にまわるという発想がすごいです。内宇宙での戦いの描写も面白いです。
◎
『愛の語学』
トムスは恋愛に目覚めた。ところが、自分の抱いた感情を言葉はうまく表してくれない。そうしたとき、彼はティアナ第二星の「愛の言語」の話を聞く。彼はティアナ第二星に旅立ち、「愛の言語」の習得に毎日励むのだった・・・・・・。
「愛の言語」習得のための特訓の様子が素晴らしいです。愛のパターンをすべて知り尽くし、肉体による愛も極めた男。かっこいいわー。最後が単純に終わらなかったのもいいです。
総評:それなりに面白いっていう作品が多かったように思えます。外れはありませんでした。『原住民の問題』は歴史を違った視点から眺めたり、舞台を違う位相に移し変えることで、直接的な風刺や、揶揄を与えることのできるSFという装置が巧く使われていてよかったです。
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