6年前に消息をたった宇宙巡洋艦コンドル号探索のため〈砂漠の惑星〉に降りたった無敵号が発見したものは、異星の地に傾いてそそりたつその船体だった。生存者の姿は見あたらない。船内が混乱をきわめているにもかかわらず、不思議なことに攻撃を受けた形跡はなく、さまざまな防衛手段は手つかずのまま残されていた。果てしなく続く風紋、死と荒廃の風の吹き抜けていく奇怪な〈都市〉、偵察機を襲う〈黒雲〉、そして金属の〈植物〉-探検隊はテクノロジーを駆使して異星を探査したが・・・・・・。レムが異星における人間を描き、科学的認識の絶対視に疑問をなげかけた問題の書!
前半は単調で読み進めるのに辛い感じがしたのですが、「黒雲」が登場したあたりから、ぐいぐい引き込まれました。
人間には理解できない存在というのは、非常に大好きな展開で、その辺、個人どうしの障壁みたいなところと似たところもあるんですが、「互いに理解し合うことができない」という冷徹な目線はけっこう好きですね。
「わけのわからない存在」なんかはSFなんかでしか表現できないもの、お話の中でしか展開できない限定性を持っていて、いいですねえ。これこそ「センス・オブ・ワンダー」なのではないか、と。
ただ、全体的に、人間どうしの葛藤とか、つながりはほとんど描かれていなくて、それがヴォクトを読んだ後の自分には希薄な印象につながったのかもしれません。船長や科学者らの問答も論文調で、文体的な工夫がもう少し、ほしい感じもするし(それともこれは翻訳の問題だろうか)。
でも、〈黒雲〉対戦車キュクロペスの戦闘や、最後のロハンの単独行の心理描写は素晴らしかった。
自分的には、どうしても「ソビエトの小説」っていう印象のお話です。
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