◎
『地球防衛軍』
人類は地下に潜り、地上ではロボットが戦争を代行している。テイラーは地上の調査団の一員に選ばれるのだが・・・・・・。
ディックのロボットものは面白い。最終的な融和を目指すその姿勢が好きですね。アンダースンみたいなアメリカ帝国主義と違って。
◎
『傍観者』
清潔党と自然党の二大勢力が争う世界。暴力さえ辞さないほどの、二党の抗争に辟易しているウォルシュは、精神分析医に自分の見の処し方を求めたりしている。議会では清潔党の修正案が通って・・・・・・。
なんだかラストが悲しいんですが。でも、面白い話ですね。特に二大政党が出来上がる過程に、企業の広告戦略があるなんてところが、いかにもな感じがして、彼の味がでています。
◎
『歴戦の勇士』
火星・金星の植民地に独立の気運が出ていた。しかし、政府のキャンペーンで地球人たちは火星人・金星人への敵意をむき出していった。そんな折、未来から一人の老兵が地球敗北の報をもたらしたのだった・・・・・・。
うーん、サスペンスとして、素晴らしい作品。政府のキャンペーンとか、やっぱり権力に対する懐疑がみえていていいですね。この作品も、個人的な感情を超えて融和に歩み出そうとする姿がみえていい。
○
『奉仕するもの』
四級職員の郵便配達員アップルクィストは、廃墟と化した谷底で、一体のロボットを発見する。
発達した世界でレジャー主義者と復古主義者が・・・・・・っていう考え方も面白いですけどねー。うまくだまされました。
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『ジョンの世界』
幻視する息子を持つライアンは、航時機で戦争が行われる前の世界へと出発することとなる。人工頭脳の開発者の論文を手に入れるために。
やっぱり、幻視者がでてくると「おっ」と思ってしまいますね。タイムトラベルものです。
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『変数人間』
ケンタウリとの戦争に踏み切るかどうかは、コンピュータの数字にかかっていた。その数字が7:6で地球有利になったとき、歴史調査部の手違いで一人の人間が二十世紀初頭からやってきてしまった。そのデータを入力した途端、コンピュータの数字はめちゃくちゃに・・・・・・。「変数人間」に軍は追っ手をかける!
いやー、面白い。傑作サスペンスです。二十世紀初頭から来たただの修理工の男が、最新研究のものをそんなに簡単に操れるのか?と疑問もわきますけど。それを考慮したとしても、あまりある面白さです。これも、戦争を本質的解決の手段にしないところに好感がもてます。
総評:浅倉久志さんの翻訳は、なんだか面白さが保証されているような気がして安心して読めます。新潮文庫のディック短編集はすべてよかった。
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