人生に目的などありはしない―――すべてはここから始まる。曖昧な幸福に期待をつないで自分を騙すべからず。求むべきは、今、この一瞬の確かな快楽のみ。流行を追わず、一匹狼も辞さず、世間の誤解も恐れず、精神の貴族たれ。時を隔ててますます新しい澁澤龍彦の煽動的人生論。
まず思ったのはこれは実践の書ではないということ。
寺山修司の「書を捨てよ町へ出よう」を読んだときも思ったんですけど、要は観念の遊びなのかなあ、と。
書中にもありますが、「現実原則」がある限り、現実にはこれは無理なんですよねえ。むしろ、実現不可能だからこそ、憧れをそこに見出すということでしょう。
僕はすべてを「捨てる」という隠遁者の生活にも憧れるのですが、西行などのお話は唐木順三の「無用者の系譜」が元ネタとして使われています。最近読んだので、そこの部分が非常に面白かった。ただ、それらは西洋の「人工楽園」を創出しようとした作家たちと比べて、どちらかというと否定的な感じです。
僕は洋の東西を問わず奇人の物語がすきなのですが、ディオゲネスという人はすごいですね。樽の中に住んでいるというのは本当におかしなやつだと思うのですが、そういう人が尊ばれているという社会というのもすごい。昔は精神病の人は「神」と同じ扱いをされたということですがねえ。サドの行動もすごいなあ。
幸福より快楽を求めよう。精神貴族であれ。そういう人生が送れたらどんなに幸せでしょう。
理想と実践の間には深い溝が横たわっている。それとどう折り合うかが、人生ってことなのかなあ。こう悩むのは僕がまだ偏見から解き放たれていないからなのでしょうか。・・・・・・いろんなものから自由になりたい。まずは自分という束縛から逃れたい。でも、実はそれが一番難しい。この本を読んで強く感じました。こういうことも韜晦して笑って語れるような大人になりたいもんだなあ。
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