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村上春樹「パン屋再襲撃」(文春文庫)

堪えがたいほどの空腹を覚えたある晩、彼女は断言した。「もう一度パン屋を襲うのよ」。それ以外に、学生時代にパン屋を襲撃して以来僕にかけられた呪いをとく方法はない。かくして妻と僕は中古カローラで、午前2時半の東京の街へ繰り出した…。表題作ほか「象の消滅」、“ねじまき鳥”の原型となった作品など、初期の傑作6篇。



 収録作「パン屋再襲撃」「象の消滅」「ファミリー・アフェア」「双子と沈んだ大陸」「ローマ帝国の崩壊・一八八一年のインディアン蜂起・ヒットラーのポーランド侵入・そして強風世界」「ねじまき鳥と火曜日の女たち」

 全体を通して感じたのは、共に一つ屋根の下で暮らすということ、そして男と女という問題。若かりし自分と現在の自分とのずれ、なし崩しに他人に巻き込まれていくことへの混乱がある。

 通して読むうちに楽しくなってくるのは「渡辺昇」の名前をめぐるもの。「象の消滅」では飼育員の名前、「ファミリー・アフェア」では妹の婚約者、「双子と沈んだ大陸」では主人公の会社の共同経営者、「ねじまき鳥と火曜日の女たち」ではワタナベノボルは猫および妻の兄貴の名前(長編の「ねじまき鳥クロニクル」ではワタヤノボルである)である。出てくるたびにニヤリとするものがある。

 それぞれ日常の中の非日常という感じで、奇妙な世界を構築している。一番気に入ったのは「ファミリー・アフェア」で声を出して笑ってしまうほど愉快で好きだ。「ねじまき鳥」はどのような長編化が為されているのか気になる。どの作品もとぼけたユーモアがふんだんにあって、自然と楽しい気分になってくる短編集だった。
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