人類が宇宙に進出したその日、巨大宇宙船団が地球の空を覆った。やがて人々の頭の中に一つの言葉がこだまする。人類はもはや孤独ではない。それから50年、人類より遥かに高度の知能と技術を有するエイリアンは、その姿を現すことなく、平和裡に地球管理を行っていた。彼らの真の目的は?そして人類の未来は?宇宙知性との遭遇によって新たな道を歩みだす人類の姿を、巨匠が詩情豊かに描きあげたSF史上屈指の名作。
この年までSF素人でよかったと心底思った。海外SFでこんなに心が打ち震えたのはいつ以来だろうか?中学生の時に読んだディックの長篇群、高校生の時に読んだ『ニューロマンサー』や『夏への扉』以来ではなかろうか?はっきりいって小説という域を超えた作品だと思う。
伏せられたオーバーロードの姿や目的が読者の興味を持続させ、その正体が明かされるにつれて、さらなる興奮を覚え、取り残された人類としての痛みを感じ、それでいてあくまでポジティブな気分になれる・・・・・・。
科学に対するクラークの楽観性が僕は好きだ。それ以上に、物語にあふれるロマンチシズムが科学啓蒙話ではなく、「小説」としての価値を高めている。リアリスティックな面だけではなく、オーバーロードに理解できなかった感情的な面が読者を熱くさせるのだ。それを壮大なスケールで描きあげたクラークの作家としての技量はすごいと思う。
こうした人類の存在を極めて生真面目に、哲学的に描ききった作品に、これまたSFに対する生真面目な姿勢と文体を持った福島正実氏の誠実な翻訳が加わって、この作品の格調の高さを保っているのだと思う。
言葉で持って表せないこの感動!そして、SF素人の前には、まだ古典と呼ばれる作品がまだ幾つも残っているのだ!これを幸せと呼ばずになんと呼びましょう?
アーサー・C・クラーク作品感想
『幼年期の終り』
『イルカの島』
『海底牧場』
『宇宙のランデブー』
『2001年宇宙の旅』
『2010年宇宙の旅』
『2061年宇宙の旅』
『3001年終局への旅』
『神の鉄槌』
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COMMENT
福島正実氏の名訳
ハヤカワSF文庫が好き
キリスト教文化圏~のところを読んで、なるほどと思いました。あちらの人とは、読むときの感覚は確かに違うでしょうねえ。