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SF素人が空想科学小説に耽溺するブログ。

モラトリアム

   

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SF読もうぜ⑰コードウェイナー・スミス『鼠と竜のゲーム』

人類補完機構シリーズ。


『スキャナーに生きがいはない』

 「空の向こう」に行くために身体を機械の身体に改造されたスキャナーのマーテル。彼は「クランチ」中であったため、人間の感情を維持していた。スキャナーの存在を否定してしまう、新たな宇宙航法が開発されたという情報が入って・・・・・・。

 いろいろと説明がないのでわかりにくい、と当初は戸惑いながら読んでいましたが、途中から背景を類推して読んでいくという新しい感覚が芽生えてきていいです。ただ、サイバーパンクを経験していると、少し古臭く感じるかもしれません。でも、いい話です。

『星の海に魂の帆をかけた女』

 スキャンダルにまみれた女性の子として誕生したヘレン・アメリカは、幼い頃からマスコミの注視の的だった。彼女は宇宙飛行士を目指して、勉学に励んだ。そんな時、宇宙飛行から帰ってきた一人の男性と知り合って・・・・・・。

 宇宙飛行にかかる時間というのは、すごいですね。太陽系から一番近いアルファ・ケンタウリまで、光の速さでも4年ちょっとかかる。それを利用した一途なラブ・ストーリー。いい話やなあ。スミスの道徳観って、かっちりしてる。

『鼠と竜のゲーム』

 平面航法が発明された後、人類はしばしば、宇宙空間で、「竜」と呼ばれる何かに死をもたらされることとなった。竜を倒すには、光を使うしかない。そこで、光線爆弾を竜に発射し、倒すピンライティングが誕生した。ピンライターのアンダーヒルは本日のパートナーと共に、竜を倒す。

 昨日の『逃亡者』と同様に、ペットと思考が繋がるという話が大好きです。ネコって可愛いなあ。テレパスものでは、よくありますが、やはり、精神的に繋がると一種の連帯感というのは自然と発生してしまうのでしょうねえ。アンダーヒルの気持はわかるような気がします。ネコはやっぱり魔性の動物ですね。

『燃える脳』

 かつては、宇宙一の美貌を誇ったドロレス・オー。そして、その主人のゴー・キャプテン、マーニョ・タリアーノ。タリアーノの操縦する宇宙船がまったく見知らぬ場所に迷い込んだとき、タリアーノはその脳を焼き切り、元のコースへ戻ることを決意する。彼の知性を犠牲にして・・・・・・。

 いい話やー。タリアーノの愛に懐疑的になっているオーと、彼女への愛情を証明してみせたタリアーノ。悲しいラストですが、しみじみと身に染み入ってくるような感覚がある。既に一度読んだ作品ではありますが、こうやって一連のシリーズの中の一つとして読むと、また違った感慨があるものですね。

『スズダル中佐の犯罪と栄光』

 スズダル中佐は失策を犯してしまった。強烈な悪意を持った植民惑星の人間に欺かれた彼は一つの犯罪行為を断行する。

 壮大だア。「やっぱり猫が好き」、なんですね。最後の方はなんだかネコがいっぱい活躍する視覚的な絵が浮かんできて楽しくなります。アラコシア人が生き延びるためにやったことなども、非常に興味深く読みました。

『黄金の船が-おお!おお!おお!』

 ラウムソッグとの戦いで、地球は一億五千万キロメートルの黄金で、巨大な宇宙船を兵器として投入し、テデスコがその宇宙船を操る任にあたった。しかし、それは・・・・・・。

 うーん、強烈なハッタリ話だ。クロノパシー能力というのもすごいが、その使い方がひどいなあ。疑似体験による快感と、実体験による快感があって、後者を選択する、というのがスミスの道徳性を表していて興味深い。仮に僕がスミスだったら、疑似体験に没入させちゃうような気がする。

『ママ・ヒットンのかわいいキットンたち』

 ノーストリリアを守護するママ・ヒットンは、盗賊の気配を感知した。その盗賊の名はベンジャコミン・ボザート。ボザートは非人道的に、彼の任務を遂行しようとするが、気づかぬうちにノーストリリアの手の内に落ちていく。

 キットン(子猫)って、最初見た時に、またネコの話かな?って思ったけど、綴りが微妙に違うんですね。正体はおぞましい怪物でした。キットンのひっかけがやっぱり一番面白かった。

『アルファ・ラルファ大通り』

 ポールとヴィルジニーはカフェでマクトという青年に出会う。彼らは予言をする機械アバ・ディンゴを見るためにアルファ・ラルファ大通りという今は打ち捨てられた通りを行くのだが・・・・・・。

 前半のユートピア的世界と、後半のまがまがしい世界のギャップがいい。「恐怖」。人類の再発見後には幸せばかりが待っているわけではない。それは、それ以前の世界でもそうだったんでしょうが。どんな理想郷にいたとしても、人はないものねだりをするものなのでしょう。それにしても、ク・メルは素敵なキャラクターだ。

 総評:素晴らしい、という評価よりは「すごい」といった方が正確に伝わるでしょうか。まさに独自の世界観です。つまらない作品がない。不愉快な描写があまりない。それだけ、理性的な面を持った作品なのでしょう。複数の文化を経験している作者ならではの懐の深さではないでしょうか。『シェイヨルという名の星』と『第81Q戦争』もう買ってあるので、早速読みたいと思います。
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