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SF素人が空想科学小説に耽溺するブログ。

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SF読もうぜ(64) アーシュラ・K・ル・グィン『闇の左手』

0af2a79f.jpg 遥かなる過去に放棄された人類の植民地。雪と氷に閉ざされた惑星ゲセン。〈冬〉と呼ばれているこの惑星では、人類の末裔が全銀河に類を見ない特異な両性具有の社会を形成していた。この星と外交関係をひらくべくやってきた人類の同盟エクーメンの使節ゲンリー・アイは、まずカルハイド王国を訪れる。だが、異世界での交渉は遅々として進まない。やがて、彼は奇怪な陰謀の渦中へと・・・・・・ヒューゴー、ネビュラ両賞受賞の傑作。

 ・・・・・・暗い。寒風しみる最近の季節に合わせたかのような雪・氷に覆われた世界。ああ、心までが寒々しくなるようだ。冒頭は人間関係まで冷たい。
 ところがどっこい、徐々にアイとエストラーベンの関係が暖かくなってくるにつれて、こちらの心も雪解けて、最後には涙になって瞳を濡らすほどに・・・・・・。

 両性具有のゲセン人は中世的存在。ある意味で完全体なのだそうだ。そのおかげで、戦争に至ったことはない、と。男性の一人としては読んでて責められているような感もあるのですが。「すみませんでしたあ」と平伏したくなる感じ。すべての人間が出産を体験し、育児も片方に押し付けられることはないし、不平等感はなさそうです。確かにいいことではあるなあ。

 エストラーベンの語りは森鴎外を意識したのでしょうか。確かに鴎外の心はけっこう国と個人という点で分離している部分も多いような気がして、彼の葛藤にぴったりという感じがしました。

 互いの理解がなかなか得られないところに、この作品の深さを感じます。エストラーベンがどのような観点から、エクーメンと同盟を結ぼうとしていたのかも、心に響きました。

 非常に面白い。ただ、オールタイムベスト級の作品だといわれると、そこまで傑作であるかは?マークが浮かんでくるのですが。まあ、期待しすぎたこともありますが。僕は常にSFには「驚き」を求めているので、ケレン味のあまりない物語には評価の点が辛いので、淡々と語られ続けるこの作品はあまり肌に合わなかったのかも。
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