サイトのタイトルが「モラトリアム」ですので、モラトリアムな漫画をひとつ。黒田硫黄の『茄子』です。『茄子 アンダルシアの夏』として映画化されたのでご存知の方も多いと思われます。
茄子に関する連作短篇という不思議なお話です。
基本的に短篇なのですが、連作になっているのもいくつかあって、その中でも私が好きなのは有野という男の子と国重という女の子の話です。二人は高校時代の同級生です。卒業してからしばらくして偶然出会うと、二人ともフリーターになっていました。国重さんは「なかよしを強要される」こと、有野くんは「
朝起きれなかった」というそれぞれの理由で会社を辞めてしまっていたのでした。唐突に二人はキャッチボールをすることを約束し、翌日、近所の土手に弁当を持ってお出かけです。二人はキャッチボールをして、その帰途でお話は終わりです。
たったこれだけのお話なのですが、その台詞が秀逸です。
「私さあ なんかレンアイとかケッコンとかコドモうむとか なんかそーゆうことぜんぶしないで生きてこうと思う 決めた」
「僕もレンアイとかケッコンとかやめよう なんかいらない気がする」
ラストの台詞も素晴らしいです。
「
働かないで生きていけないかなー」と言う有野くんに笑顔全開で「
無理じゃん?」と答える国重さん。愛すべきダメ人間たちです。でも、そこがいい。素晴らしくモラトリアム。
この後、有野くんが「若隠居」になるためにインドにいったりします。
このシリーズは見開きにすべてが詰まっていると個人的には考えたりします。第一話目ではお弁当の見開き。第二話ではゲームのエンディングの見開き。特に第二話では、現実ではなく、虚構の中に自分の幸せを見いだしている主人公たちに、僕は共感してしまいます。それが肯定的に描かれているか、否定的に描かれているかはわかりませんが、胸に迫ってくるものがあります。
あと、個人的にオススメなのは富士山の頂上に作られた地熱プラントの工事現場が
茄子の化け物に襲われるという話です。面白いし、ある意味笑えます。
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