画期的な新航法〝コラプサー・ジャンプ"の発見で、人類はその版図を一挙に拡大した。だがその進路に、突如異星人〝トーラン"が出現。この正体不明のエイリアンと人類は、ついに全面戦争に突入した!かくして特殊戦闘スーツに身を固めた戦士たちが辺境宇宙の戦地へと赴いたものの、戦況はいやがうえにも泥沼化していく・・・・・・俊英が壮絶な星間戦争を迫真の筆致で描き、ヒューゴー、ネビュラ両賞を受賞した傑作戦争SF!
すごい。
興奮して読みました。やはり、戦争小説は面白い。死と生の境にある精神状態を間接的に感じることで、平穏な生活に生きている我々は、感情が揺れ動かされるのでしょう。始終揺さぶられっぱなしです。
もちろん、戦闘のシーンだけでなく、相対論的時間差によって、変転する社会の中で苦悩する主人公の心理にも心動かされるものがあります。本人も、軍隊の中でフリーセックスの状態をなんとも思っていないわけですが、久々に地球に帰ってきたら、同性愛が「常識」に代わってしまい、異性愛が「異常」になってしまっている。この価値観の差異を示して、我々が現実に持つ価値観を揺さぶったり、再確認させたりしてくれるのが、SFの醍醐味ですよねー。
戦争というシステムの中に取り込まれた一個人は、なすすべもないまま、軍隊の中の一つの駒に変わってしまう。その不条理に対する怒りというのが炸裂した作品でもあります。作者はベトナム戦争を経験していることもあり、現代の戦争の不条理をSF小説という形で表したのでしょう。
月並みですが、解説にもあるように、ハインラインの『宇宙の戦士』と対比して考えてしまいますね。「対ファシズム」という大義名分のあった第二次大戦と、ベトナム、そしてイラクの戦役では、まったく意味合いが違ってきているのでしょう。そして、トーランと人類の戦争の発端は、今度のイラク戦争を思い起こさせ、心が暗澹としてきます。自分の力を圧倒的に超えた組織の権力に対する怒りと、絶望と、悲しみ。それが心にじわじわと滲んできます。
ただ、突如として、これまでの雰囲気をぶち壊しにしかねない結末がやってくるのですが・・・・・・。僕はこういうのが大好きだぞー(笑)。作品の完成度は破壊してしまったような気がしますが、個人的には嬉しかったな。
とにかく、読まなきゃ損な小説だと思いました。読んでよかった。
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