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SF素人が空想科学小説に耽溺するブログ。

モラトリアム

   

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強烈なバイオレンス(SF120) ハーラン・エリスン『世界の中心で愛を叫んだけもの』


 ハーラン・エリスンの短編集。


『世界の中心で愛を叫んだけもの』

 大量無差別殺人の犯人ウィリアム・スタログは死刑を宣告される直前、こう叫んだ。「俺は世界中のみんなを愛している」。そして、遠くクロスホエンでは・・・・・・。

 うーん、読み終えた後にズシンとくるものがあります。最初の衝撃的な大量殺戮から始まって、それからスタログの「愛」の叫びというおそろしくギャップのある行為に驚き、そしてその狂気の根源が明かされる・・・・・・。短い作品であるからこそ、無駄な言葉もなく、余すことなく語りつくされているような完璧な作品のように思えます。『The Beast that Shouted Love at the Heart of the World』。題名もかっこいい。

『101号線の決闘』

 赤いマーキュリーに追い抜かれたジョージは、その車に決闘を申し込む。

 決闘法が成立している社会。バイオレンスだなあ。若い者への願望憎悪をむき出しにした中年男の話。勝ったのはいいけど、ラストがねえ。

『不死鳥』

 失われた大陸を求めて、三人は行く。しかし、砂漠上で人々のエゴは募り・・・・・・。

 うーん・・・・・・。いや、面白いけど。なんか複雑な気持ちになるなあ。すっきりしないというか。

『眠れ、安らかに』

 600年間眠り続ける〈睡眠者〉を殺すべく海底深く潜るアボット。彼はこの戦いに勝利することができるか。

 睡眠者がなぜ深く沈められているかとか、集団超能力戦とか、もう面白すぎる!やはり、戦争小説は面白い。

『サンタ・クロース対スパイダー』

 謎の組織「スパイダー」を倒すため諜報員のクリスは奮闘する。彼はサンタの扮装で・・・・・・。

 これは、もう、ほんと超面白いですな。サンタの格好もそうですが、敵を倒した後とのオトボケぶりとか、なかなか狂ってていいです。もう、脳髄直撃の面白さ。スパイもののパロディとしてもイケます。

『鈍いナイフで』

 深々とわき腹を刺されたエディ・バーマは〈穴ぐら〉へと逃げ込むのだが・・・・・・。

 うーん、微妙。

『ピトル・ポーウォブ課』

 モーグはいらだたしさのあまり放射した。

 ストーリーの説明ができません。意味のわからない面白さ。

『名前のない土地』

 ポン引きであり、ジャンキーでもあるノーマン・モガート。ヒモである彼は新しい稼ぎ手を見つけようとするが・・・・・・。

 うーん、よくわかんなかった。たぶん、神話に関係あるんでしょうけど、そういう基礎知識がないからなあ。

『雪よりも白く』

 どこかに自分の運命の女性がいるはずだと信じるポール。そして、彼は雪山で・・・・・・。

 アホですな。ちょっと、笑ってしまいました。

『星々への脱出』

 キバ星人の侵攻の最中、食料品店から金を盗み出そうとしたベンノ・タラントは軍に捕まる。そして、彼はとんでもないものを手術で体内に埋め込まれたのだった。

 バイオレンスだ。そして、ピカレスクかもしれない。徹底的にエゴイズムに走る主人公の様子は、ある意味で清々しささえ感じてしまう。復讐心に燃え上がり強くなっていく様子に『虎よ、虎よ』を思い出しました。しかし、個人的にはこちらのほうが何倍も面白く感じました。

『聞いていますか?』

 「わたしが存在を失いはじめたのは火曜日の朝です」。

 透明人間の変種物。似たような作品はいくらでもあると思いました。

『満員御礼』

 すかんぴんの興行師バート・チェスターは、ブロードウェイに現われた宇宙船を見て、これは儲けることができると考えた。

 うーん、最後の方がちょっとよくわかんないけど、大筋では楽しめました。

『殺戮すべき多くの世界』

 惑星征服をビジネスにするジャレッド。マシーンの宣告した今度の以来は女権世界ケインの征服であった。

 映画『HERO』を思い出させる結末でした。ジャレッドは秦始皇帝になれたのだろうか?

『ガラスの小鬼が砕けるように』

 軍を病気除隊になったルーディは婚約者だった女性を追って、一軒の家へとたどりつくのだが・・・・・・。

 ジャンキー小説。最後にモンスターが出てくるあたり、SFとはいえます。ネビュラ賞第二席ということですが、そんなに面白いとは感じません。

『少年と犬』

 戦争に使用された兵器の犬ブラッドとともに、アーノルドは「ソロ」として地上で生きていた。そこへ地下のミドルクラスから現われた女が来たせいで・・・・・・。

 うーん、衝撃的ラスト。まあ、犬買ってるのでわからなくもないですよ、その気持ち。しかし、まあ・・・・・・。倫理的に抵抗を感じる作品です。しかし、これまたバイオレンスだなあ。

 総評:なぜか途中まで読んでいて、半年ほどほったらかしていた本。
 はまるとものすごく面白いですね。ただし、はまらないものはいっさい理解できない。とにかく、バイオレンス。血沸き肉踊ります。アドレナリン大放出。
 ベストは決めがたいですが、一番お気に入りは『サンタ・クロース対スパイダー』です。『世界の中心で~』も『星々への脱出』も、捨てがたい。
 もっと、作品を読んでみたいけど、これ一冊しか本がでていないのはなぜだ!?
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