本日は巨匠
宮崎駿の漫画というよりは、絵物語『
シュナの旅』です。
谷底の貧しい小国の王子シュナは死に瀕した旅人から、見たことのない穀物の実を見せられる。ここからずっと西の大地果つるところに、黄金の穀物の揺れる豊穣な土地があるという。シュナは民の苦しみを除きたいと考え、黄金の穀物の種を求めに、あるとも知れぬ西の果てへ掟を破り旅立つのであった。
世界の宮崎駿の創造する世界を堪能できる素晴らしい本。全ページカラーで、「ロマンアルバム」や「ジ・アート・オブ」の設定画やイメージ・ボードで見られるような水性絵の具での着色具合が独特でそれも一つの味となっています。
後の(連載開始はこれ以前のようですが)『風の谷のナウシカ』のヒドラやシュワの墓所の原型となっていると思われるものが登場したり、ヤックルという家畜の登場や少年が西へ旅立つといったイメージは『もののけ姫』に通じていて、ファンにとっては非常に興味深い作品です。
特に神人の土地に入った後の世界観は圧巻。ここにない世界を現出させるその創造力にはいつも圧倒されてしまいます。
今回、読み直してみて、この物語の原型となったチベットの民話「犬になった王子」を読んでみようと思いました。宮崎駿の作品において僕が好きなのは「世界を救おうとする少年少女の思い」(誰かを救いたいといった
自己犠牲的な行為)です。「犬になった王子」もシュナと同じく、「穀物を持たない貧しい国民の生活を愁いたある国の王子が、苦難の末、竜王から麦の粒を盗み出し、そのために魔法で犬の姿に変えられてしま」うお話だそうです(あとがきより)。これを読むことで、また新たな「シュナ」が発見できたらいいなあと思います。
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COMMENT
絵本『犬になった王子 チベットの民話』(岩波書店)
日本画家・絵本画家 後藤 仁
Re:絵本『犬になった王子 チベットの民話』(岩波書店)
民話や昔話が大好きなので、ぜひ、読んでみたいと思います。
コメントありがとうございました。