本日は現在『誰も寝てはならぬ』を連載中のサラ・イネスさんがまだ
サラ・イイネスだった頃の作品、
『大阪豆ゴハン』。1992-1998「モーニング」連載。
大阪市内にある数寄屋造りの古い屋敷に住む五人家族。長女加奈子、その夫ユハさん、次女美奈子、三女菜奈子、長男松林(ショーリン)を中心にして描くお気楽家族の日常生活。
女性作家特有の生活に根付いた視線から描く日常生活マンガ。家、料理、洋服、仕事、旅行・・・・・・
およそ人間の活動として行われるほとんどが描かれている。地球を守るとか、人間を救えとか、身分の違いを超えた恋愛とか、そんなたいそうなテーマのものばかり読んでいると、ふとこうした生活の周辺を描いたものを読みたくなる。そういったときにオススメなのがこの作品です。
各登場人物にこれでもかというほどエピソードが詰め込まれ、しかもそのどれもが「ああ、このキャラクターならそうだよねー」と納得できてしまう。それは確かに
自分の周辺に似ている人物や、重なる性格の人間がいるからなんですよね。サラ・イネスのその観察眼の鋭さにはいつも感動させられます。
それが発揮されているのがときどき見られる「異文化との接触によるカルチャー・ショック」と僕が感じているものです。各家庭ではその家にしかない常識とかありますよね。そういった
家庭、あるいは個人単位の文化的な違いを羅列させるとこのマンガは本当にすごいんです。常識なんてものは思い込みにすぎないことがよくわかります。
すごく日本的なお話のように思えますが、絵柄が特徴的で登場人物のほとんどが鼻が高くて面長な西洋的な顔をしています。マンガなのでそんなに違和感はありませんが、例えていえば海外ドラマの役者さんが日本の日常生活を演じているという感覚です。長身でスタイルのいい登場人物たちが我々日本人用の胴長短足に適した生活空間をその長い手足で動く様はなかなかエレガントで、これもこのマンガの一つの魅力ではないかと思います。
また、舞台が大阪であり、大阪弁がぽんぽん飛び交い、大阪人特有の「いい加減な」(
おおざっぱと
ちょうどいい塩梅という両方の意味で)人々が登場し、悩んでいるときに「人生ってそんなたいそうなもんじゃねえよなあ」と思えてしまう。特に松林のポカンと開いた口を見ていると。
購入してから数年。本棚の取りやすいところに必ず置いてある心の治療薬です。
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