本日は
とり・みき『クルクルくりん』。1983-1984『週刊少年チャンピオン』連載。岩井小百合主演でTVドラマ化もされています。
東森博士は理想の女性型アンドロイドを作ろうと、大型コンピュータに様々な実在の女性の人格を詰め込んでいた。ところが、事故で娘のくりんの中にそのデータが転送されてしまう。そして、心理的ショックを受けると彼女の人格が引っ込んでしまい、
別の女性の人格が現れてしまうのだ。
事故から9年後、
背徳学園に入学した松本イオは入学式のその日に、彼女の秘密を知ってしまう。そして、くりんの父親である東森博士の頼みでくりんの秘密が他人にばれないよう、また、変身のきっかけを与えないよう監視役を頼まれるのだが・・・・・・。
吾妻ひでおの影響を深く受けたとり・みきの作品。あの『失踪日記』でもインタビュアーを務めていましたね。作者が登場したり、登場人物のとぼけた行動など、吾妻的なギャグが多いSF作品です。
個人的印象では、この作品、『週刊少年マガジン』で連載され、現在は『マガジンスペシャル』に移籍して連載中の『ガチャガチャ』の第一部にそっくりです。いや、『ガチャガチャ』がこの作品にそっくりです。(ここから先は作品の内容に言及しています)
まず、①女の子が頭の中に
複数の女性の人格をダウン・ロードされる。②ショックで
人格が入れ替わる。③
やたらに露出度が高い。④そして、ラストは雷に打たれたショックで元のくりんの
人格が出てこなくなってしまい、イオがくりんの心の中に入り、彼女を救い出そうとする。⑤そして、くりんの中にあったたくさんの人格は
逆にイオの中に転送されてしまい、今度はわたしがイオくんを助ける番ね(はあと)となる。
特に終わり方は『ガチャガチャ』の第一部のラストにそっくりです。
一人の女性の中に複数の女性の人格がダウンロードされている。これは
浮気をするという背徳感を感じずに、浮気できるという状況ですね。たくさんの女の子の魅力的な部分を堪能したとしても、その
相手は一人なのですから。自分の中の倫理を破らずに願望を充足するという形式だと思います。
まあ、『ガチャガチャ』については、偶然似たのか、インスパイアされたのか僕には知るよしもないですが、男の願望っていうのは今も昔もそんなに変わらないんだなということを感じました。
この作品には僕の大好きな作家大原まり子をモデルにした
大原まり先生が登場していたり、単行本のおまけページにいしかわじゅんや吾妻ひでおの写真が載っていたり、SF好きにはたまらないネタがたくさんあるのでSFファンにはオススメです(早川書房から文庫化されてますしね)。
玉越博之の『ガチャガチャ』が好きな人も読み比べてみると面白いかもしれません。
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