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ブレーキのきかない男 木多康昭『泣くようぐいす』

c7c9768f.jpg 本日は現在『喧嘩商売』をヤングマガジンで連載中の木多康昭『泣くようぐいす』。1999~2000年『週刊少年マガジン』連載。(今回は作品のラストに触れています)

 千石うぐいすは小口詩織という彼女ができて浮かれていた。ところが二人が付き合っていたのは小口詩織によるドッキリで、彼女には甲子園優勝投手である蘇我という彼氏がいた。怒りに震えるうぐいすは曽我が所属する原宿幕張高校を倒すことを宣言。かくしてうぐいすとその仲間たちは打倒原宿幕張高校を掲げて野球に打ち込む(はずだった)のだが・・・・・・。

 『ジャンプ』で『幕張』が終了し、『マガジン』に移籍した木多康昭。当初は普通に野球マンガをやるつもりだったのか、単行本には野球の解説用語まで載っていました。しかし、途中から明らかに脱線し始め、私羅高校での剛田君や骨川君ら「心の友」との死闘を繰り広げるあたりから徐々におかしくなっていきました。っていうか『幕張』でも野球部だったのですが、野球なんていっさいやってなかったのでこちらの展開の方が木多康昭らしいというより、木多康昭そのものです。
 主要登場人物に斉藤洋介そっくりのキャラクターがいたり、田代まさし道場なるものが登場したり、森脇健児の「夢がモリモリ」時代の栄光について語ったり、みつまジャパンエスパー伊東なんかの微妙な位置の芸人を取り上げたりと芸能ネタが『幕張』よりスケールアップしています(次作『代表人』ではさらにエスカレートしてますが)。
 マンガのパロディも充実していて、『ドラゴンボール』はもとより、こせきこうじ、『ジョジョ』、『キン肉マン』等のジャンプネタや、『寄生獣』『ドラえもん』『はじめの一歩』など幅広く取り揃えていてマンガ好きにはたまりません。
 しかし、圧巻はやはり最終回。打ち切り決定後も平然とストーリーを進めていた木多康昭は最終回直前まで感動的なまでに真面目に野球マンガに取り組んでいました。しかし、それはあくまでも最終回への伏線だったのです。
 最終回、高校野球千葉予選一回戦のマウンドに立とうとするうぐいすは「起きろ」と声をかけられ夢からさめてしまいます。そう、マンガ界でのタブー、「夢オチ」でした。さらにうぐいすは剛田君を殺した罪で逮捕されてしまいました
 「主人公捕まる!!!完」最後のページは手錠をかけられ刑事に連行されるうぐいすの姿。主人公逮捕という衝撃的なラストに僕は大爆笑してしまいました。
 なにかをやってくれる男、そしてブレーキのきかない男、木多康昭。これからも彼には突っ走ってほしいと思います。
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