この作品は・・・嘘つき美人教師・ひとみ先生が、嘘につぐ嘘で人々を苦しめるお話。(一巻より)
僕は壷井栄の『二十四の瞳』が大好きです。小豆島に赴任した小石先生が生徒たちと心温まる交流をするという物語。涙なしには読めません。
さて、その『二十四の瞳』をもじってつけられた題名『24のひとみ』。その内容は
対極にございます。
産休の先生の代理としてやってきたひとみ先生は、
嘘つきでした。しかも、人を救う嘘ならまだ教師として理解できますが、
人を陥れる意図の嘘しかつきません。ひとみ先生の嘘の影響でクラスが
問題児なしで崩壊したり、生徒が嘘つきになったり、カウンセラーに通うはめになったり、盗難車を貸し出されたり、
Mになったり、もう大変です。掲載誌の性格を体現した素晴らしい物語です。一話読み終わる度に、思わず「
厄いわね」とつぶやきたくなったり・・・・・・。
しっかりとした太線で、スクリーントーンを使わない白と黒の対比が面白い作品です。このベタっとした感じの黒が作品の「黒さ」と妙にマッチしていていい。そして、『魔人探偵脳噛ネウロ』のような、ときにシュールともとれる心理描写があるのも特徴。気をつけて細かいところまで読むと、この作者の
狂気が感じられます。
第七話でひとみ先生の机の上に置いてあるプリントには「
召集令状 ラバウル」と書いてある。第十二話で中学生が働いているスナックの名前は「BAR
SUCK DICK」。日本語には訳したくありません。第十九話の時間経過を表すコマでは、「放課後」と書かれたプラカードが
倒れた人間の背中に突き立っていて血まみれです。あのー、一応『チャンピオン』って少年誌ですよね?
さらに、『チャンピオン』本誌での目次コメントも秀逸(?)。
マンホールって言葉はいいですね。
ANAとJALが合併したらきっと好き。
好きな時計は
セイコー。
好きな呼称は
中田氏。
などと、隠語を連想しそうな言葉を連発。『週刊少年チャンピオン』って、一応
少年誌ですよね?ちなみに、併録の『メグミックス』
はここにも書けないほどの下ネタぶりです。
このブログの下ネタ具合を考えればどれほどのものかわかると思います。推して知るべし。子どもが読んでもわかりません。
読んでいるうちに、あまりの嘘の多さに頭がくらくらしてきます。どれが本当でどれが嘘かわからない。こうした現実が瓦解していく不安定な心理状態になれる漫画は少ないので、けっこう再読する頻度が高いです。そういったところは「
イケてるわ」と親指を立てて評価したい作品です。
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