頭に角を生やした大男が扮する太陽神は狂おしく叫び、さし招く女神に突進する。ドラム、角笛の響きは最高潮に達し、娘たちの欲情の叫びは耳を聾す。祭典はクライマックスに達した!毎年国中の若者の中から選ばれるこの儀式の主役太陽神に、この年は800年の旅を終え地球に戻ってきた宇宙船〈地球号〉の船長スタッグが祭りあげられた。手術で植えこまれた角で欲望の奴隷となった彼は、否応なく異教の性的な儀式の主役を演じ続けていく。一方、他の隊員達は船長を救い出そうとしていたが・・・・・・鬼才ファーマーが奔放なイマジネーションを駆使して描く、めくるめく異様な世界。
うーん、変な話だ。でも、僕は「変な話」は大好きだー!
ブログのタイトルを「モラトリアム」から「アブノーマル」に変えようかと逡巡するこの頃。僕はグロテスクなもの倒錯的なものが大好きです。このお話も異様な感じがとっても素敵。
宇宙から八百年ぶりに地球に戻ってきたら、文化は荒廃し、異様な宗教が地上を支配している。女性は処女を毎年の儀式で太陽神に捧げ、その子を宿さなくてはならない。性が今とはまったく違う形で解放された世界で、宇宙船の隊員たちはそれぞれに戸惑う。太陽神に選ばれてしまったスタッグは自分の意志に関わらず、植えこまれた角のおかげで欲情に逆らえず、毎晩数百人の女性との交合に打ち興じる・・・・・・。カソリックの隊員は人びとの性風俗におかしくなり、処刑される・・・・・・。禍々しい世界だ。
けれど、考えてみれば日本にだって、こういう考え方はざらにあったわけで、昔の農村なんかでは村長が初夜権をもっているところや、旅人に娘を抱かせるところだって、現実に存在するのだ。九州などの南国では、暑ければ女性が上着を脱いで乳房を出したりするのも、男性が裸であっても普通だったのだ。だから、八百年という長い時間がたてば、性風俗なんてどうなってるのかわからない。こうなっていても不思議じゃないと思う。日本のSFにだって、将来がフリーセックスになるという予想はあるし、僕も寺山修二に影響されて「母さんと寝たらなぜ悪い?」という風に、仮説的な楽しみを得ることはあります。
でも、理論的に納得はできても、心情的に納得できない部分もあります。恋人を別の男に抱かれるのは、いくら神様でもいやだなあとか、やっぱり、僕は現在の人間としてのアイデンティティがあるもので。だから、グロテスクに感じるし、面白い、という複雑な気持ちになります。
途中で出てくる殺人野球?もなかなか楽しかったです。人死にがでるところが、すごいです。奇想的な物語が好きな人にオススメです。さあ、次は『家畜人ヤプー』でも読もうかな。
PR
COMMENT