垂直につづく岩壁世界の住人の暮らしぶりは?21世紀の銀座のクラブを舞台にした悲しきラブロマンスはいかがでしょう?夢の中にお菓子のCMが出てきたら、どうしますか?誕生日に両親から「世界」をプレゼントされた女の子のお話は?空中から出現しては消える〈バード〉が跳梁する世界で、スケート大会を観戦しませんか?英国SF界きっての鬼才ワトスンが、あなたを驚異の旅に案内する日本版オリジナル傑作集。
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『銀座の恋の物語』
その夫婦は離婚した。妻は東京のクラブ〈女王蜂〉で働いていた。夫婦はそこで再会するが・・・・・・。
やっぱり違和感のある日本の姿なのですが・・・・・・。妻がこちらを認識していないのが面白いなあと思いましたね。女の人に幻想をかぶせるのはよくないよね。
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『我が魂は金魚蜂の中を泳ぎ』
ある日、咳き込んだ拍子にわたしは「何か」を吐き出した。妻はそれをわたしの魂だというのだが・・・・・・。
水の中を魂?が泳いでいる姿がなんだか笑えてしまった。
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『絶壁に暮らす人々』
絶壁に暮らしているぼくら。スミアは二次元世界のお話をしてくれる。彼らは平らな地面で生活しているそうだ・・・・・・。
面白い。今暮らしている現実がすべてだと思っている人々の様子、そしてその現実が壊れていってしまう様子がとても楽しかったです。下から岩がやってくるのに無視しようとする人たちが好き。
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『大西洋横断大遠泳』
大西洋を横断する遠泳大会が行われることになった。レースは国際経済や政治を巻き込む大騒動に。
笑えます。ただ、この人の日本人像はわざとこんな風にデフォルメしているのか、それとも本気でやっているのか気になります。あんたほんとに日本に住んでたのか?田中の俳句に季語が入っていないのが、すごく気になります。川柳にもなってないし。
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『超低速時間移行機』
超低速時間移行機が登場したのは1990年だった。どうやら低時機の中では時間が逆行しているようだ。
ハッキリ言ってなにが言いたいのかよくわからんのですが、低時機の作用の仕方とかが面白かったので。
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『知識のミルク』
宇宙コロニーのセレストヴィルで暮らしていたはずのわたしは四十一歳の精神を持ったまま十四歳に戻ってしまった。
うーん、面白い。この人の小説には可能性の確定しない世界というのが多く登場しますね。ただ倫理観にかけている描写が多いのがどうも気になるのは気になるんですが。人類を超える存在というのがこれまた好きなんですねえ。
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『バビロンの記憶』
現代に建てられたバビロン。完全に再構築されたバビロンでは、人々でさえ、その世界観に完全になりきらねばならない。
温故知新といった感じなのでしょうか。純文学的な作品です。ただバビロンについてそんなに知らないので、よくわからなかった部分があるのも事実。けれど、まあ、面白いと思いました。
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『寒冷の女王』
「ダイアモンド・ダスト大破局」で凍りついた地球。寒冷に耐え抜いている人びとがとった行動とは・・・・・・。
愚かしい。けれど、最期の光景がちょっと面白かった。
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『世界の広さ』
なぜだか家への距離がいつもより遠い気がした。「ぼく」は世界がやたらに広くなっているのに気がつく。
悲劇、なのかな?世界が広くなっていく様子と、なぜ広くなったかの理屈が面白い。
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『ぽんと開けよう、カロピー!』
夢の中で見たことのないようなCMが現われていた。教師の「わたし」は同じような夢を見る人を新聞の三行広告で集めてみるのだが・・・・・・。
うーん、あんまり好きになれない作品だけど、アイデアそのものは悪くないかなー、と。
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『アイダホがダイヴしたとき』
長老は子どもの頃にした伝説的な行為を語り始める・・・・・・。
最期はなんじゃー?と思うけれど、途中はなかなか楽しかったです。潜水艦で砂の中をもぐっていくのは楽しい光景だなあ。
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『二〇八〇年世界SF大会レポート』
2080年の世界SF大会はニューボストン村郊外で行われた。しかし、そこにたどりつくまでに三人の人間が死亡していた。崩壊した世界で命がけで行われるワールドコンの様子を描いた怪作。
「第65回世界SF大会 Nippon2007 Nippon2007 the 65th World Science Fiction Convention」は今年の8月30日から行われるそうです。僕は行かないですが。昔からSF大会の話を読む度に憧れているのですが、実際足を運べるようなお金がないというのが実情です(個人的事情)。それだけ熱意がいるんでしょうねえ。さて、このお話はものすごく笑えます。特にSFは科学から解放されて神話に戻ったというスピーチが好き。
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『ジョーンの世界』
14歳の誕生日に両親はあたしに地球をプレゼントしてくれた。
いい話です。無気力になった地球に救世主のように少女が・・・・・・というのがいいですねえ。子どもの純粋性とかが強調されていてグッド。
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『スロー・バード』
静止に近い様子で飛び、突如として現われるスローバード。弟ダニエルがスロー・バードと共に行ってしまったとき兄は・・・・・・。
死に憧れる宗教を創ってしまう兄貴の様子がいいです。最期は悲劇ですなあ。話が突如として変ってしまうところもよかったのか悪かったのかわかんないですが、まあ味なんでしょうか。
総評:アイデアは素晴らしいですね。ただ小説のつくりかたがどうも・・・・・・。短篇を読むときに大事にしたいのは読後感なのですが、全部「ふーん・・・・・・」という感じになってしまうんですよねえ。最期だけぶった切れみたいな。普通の小説では最期に向けてのある期待感というか、約束事みたいなのを作って、それを履行する展開になるんですけれど、この人にはそれがないので「ふーん」とか「うーん?」とかで終ってしまうのが感覚的に合わないですね。
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