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SF読もうぜ(211) ウィリアム・ギブスン『ヴァーチャル・ライト』

img152.jpg 西暦2005年のサンフランシスコ。大地震によってベイ・ブリッジは倒壊し、多くのホームレスが一種の共同体を橋の上に形成していた。メッセージ運搬人の少女シェヴェットは、盗んだサングラスがもとで何人かの男に追われていた。このサングラスこそ、光子を必要とせず直接視神経に作用して視覚を発生させる装置「ヴァーチャル・ライト」だった。そのサングラスに隠された秘密とは…。近未来の都市風景を透視し、最新テクノロジーの行く末を予言しつつ、そこに蠢く人間達のドラマを見事に描ききった傑作。

 素晴らしい。

 ギブスンを読むのは17の時以来だから、七年ぶりということになります。けれど、初めて『ニューロ・マンサー』を読みきったときのような、体を震わすような興奮を味わいました。

 物語自体は非常にありふれたサスペンス。貧民街の少女が出来心で盗んだミラー・グラスに、とんでもない情報が隠されていて、裏社会から狙われる・・・・・・というお話です。

 しかし、ギブスンの魅力はなんといってもその書き込まれた世界観、凝った文章、パンクな主人公たちの非合法的行動、サブカルチャーの奔流、といった部分にあると思います。「トマソン」なんて言葉は初めて知りましたが、元巨人軍の選手なのだそうですね。そういった「日本」が登場するところも日本人としては「おおっ」と思ってしまいます。でも、地震の名前に「ゴジラ」はあんまりでは?

 電脳空間自体はそんなに出てこないですが、ハッカーの存在であったり、ヴァーチャル・ライトであったり、日常生活の中に溶け込んでいる様子と、不要な説明をしないところが、通向けなのかなあ。巽孝之さんが解説を書いてらっしゃるので思ったのかもしれないですが、使われる言葉は下品であるのに、平行して実に高尚な感じがするんですよね。昔、ハードSFは純文学に似ている、といったようなことをどこかで読んだのですが、一般大衆が読むのを拒否するという意味ではこの小説も同じような気がします。と、いうのはすごく個人的な意見かもしれないですが、どうでしょう?

 この作品を皮切りに90年代三部作が出版されているのだそうです。スターリングとの共著『ディファレンス・エンジン』と共に早く読みたいです。やっぱり、サイバー・パンクはいいなあ!
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