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SF読もうぜ(221) ジェイムズ・H・シュミッツ『悪鬼の種族』

img165.jpg 人類の築いた一大帝国ハブ連邦の外縁近くにほとんどすべてが海におおわれた惑星ナンディ=クラインがあった。大小無数の森林がその海上に浮び、潮流のまにまに漂っている。いま、奇妙な生態系を有するこの辺境の惑星に、人類の怖るべき敵パラファン族がひそかに侵攻しつつあった。かつて人類との星間大戦に完敗し、みずからの星雲へと逃げかえったかれらは、ふたたびその勢力をたてなおし一斉攻撃の機をうかがっていたのだ!ふとしたことからこの事実に気づいた美人野外生物学者ナイルは、ただ一人この怖るべき敵に戦いを挑んだが!?痛快無比の傑作冒険SF。

 楽しかった!

 『惑星カレスの魔女』が楽しすぎたので、シュミッツの作品は探していたのですが、ブックオフで百円であったので狂喜乱舞。期待通り、楽しいエンターテイメント。

 深井国さんの挿画も、なんだかイメージにぴったりしていてよかったです。作者シュミッツは、やっぱり、女性の造形が巧いなあと思いました。女主人公の物語が多いのだそうですが、これだけ魅力的な人物造形ができるならば、それは当然だろうなあと思いました。

 それと、脇役のマスコットキャラであるカワウソがこれまた可愛いんですねえ。幼い口調がちょっとお間抜けで、キュートです。しかも、そいつらが水中で敵を切り刻んじゃう重要な役割を担っているのです。また、浮標木の生態系もとても面白かったです。臭気を消すクリームを分泌する植物とか、スパイクを発射する果実とか、群生態の動植物の様子が『風の谷のナウシカ』っぽくてよかった!

 敵に関しては、なんだか全体主義で第二次大戦の日本軍に似ているなあと思いました。最後は自決してしまいますし・・・・・・・。そういう意味でいえば、ティコスのいう「自由な世界」っていうのはアメリカのことなんだろうなあと思いました。敵に制裁を与えないところも、アメリカの占領政策に似ていると思います。

 邦訳されているのは、あと青心社の二冊みたいだけど、これまた入手が難しそうだなあ。
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