近未来のアメリカ。政府が腐敗した社会には、「物質D」と呼ばれる右脳と左脳を分裂させてしまう恐ろしいドラッグが蔓延。人民の権利はことごとく踏みにじられていた。キアヌ・リーブス演じる覆面麻薬捜査官は、「物質D」の供給源を探るため、自らジャンキーとなりドラッグの世界へと深く潜入していくが、やがて捜査官の立場で、ジャンキーとしての自分を監視する事態に陥る。そして、彼の中で捜査官とジャンキーという2つの人格が分裂し始め、徐々に、しかし確実に崩壊していくのだった。
驚くほど原作に忠実。
実写をトレースしたようなアニメーションによって描かれる不思議な世界。道具立てとしてSFの小道具は使われてはいるものの、7年後の未来ということで、ほぼ現代の世界が描かれています。
みんな、麻薬に頭をやられているので、発言や行動がやっぱりおかしいです。何度も何度も笑いました。小説では含み笑い程度ですむけど、映像で見るとやっぱりおかしみの程度が違いますね。ウディ・ハレルソンの動作が楽しい。
DVDの特典映像にはディックのインタビューが収録されています。人間は生きてるうちの70パーセントを監視されて生きているそうです。さすがに、そこまではないのでは。と思いつつも、監視カメラは日常的に目にするし、監視社会というのは、もう僕たちの世界に当たり前のように入り込んでいます。あながちディックのいうことも突拍子もないことではないのかもしれません。
腺病質なキアヌ・リーブスはボブ・アークターにはまり役でした。ほかの役者も実績のある人で固められていて、安心して見ることができました。最後の残酷なところまで、原作に忠実であり、監督の原作に対するリスペクトが全篇を通じて感じられるものになっています。ただ、残念なのはキャロル・キングの曲にのせて、ドナがトラックに突っ込むシーンがなかったことです。あのシーンが一番好きなのですが。
以前、小説の感想で、「アレな映画になりそう」と失礼なことを書きましたが、いい意味で期待を裏切られた感じです。映画が終った後のディックのメッセージには、小説同様に感涙しました。いい映画でした。
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